第24話(1)忍びの者の家庭の事情

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「銀角と金角は光風霽月が撃破しました!」


「な、なんだ⁉ どいつもこいつも初耳だぞ! 誰が誰を撃破したって⁉」


 土友の報告に小金谷がはっきりと困惑する。


「カントリオ娘のミカンからの報告によると、銀と金がTPOシルバーとTPOゴールドを破壊された後、銀角と金角に乗り換えたものの、光がファンとヂィーユエと合身して光風霽月となり、この二機を撃退した模様!」


「う、うむ……なかなか理解が追い付かんが、とりあえず北方の脅威は片付いたのだな!」


「! こ、今度は東側から攻めてきた模様! びわ湖西岸の部隊が劣勢です!」


「なんだと⁉」


「ふふふ……宇治と瀬田を抑えれば京の攻略は成ったも同然や……」


 志渡布の声が聞こえる。小金谷が即座に判断を下す。


「機動力のある機体は東に向かうぞ! 如意ヶ嶽付近で迎撃する!」


「よっしゃ、オレらも続くぜ!」


 FtoVが自ら動き、檜玲央奈も搭乗するストロングライオンを東に向かわせる。


「ああ、玲央奈さん! し、仕方ありません、奇異兵隊は東に転進!」


「了解した」


「OK~♪」


 隊長である赤目太郎の言葉に、山牙ウルリケと波江ベアトリクスが頷き、奇異兵隊の四機は東側に移動を開始する。玲央奈は勇ましく声を上げる。


「へっ! どこからでもかかってこいってんだ!」


「玲央奈さん、隊として足並みを揃えないと!」


太郎が玲央奈に声をかけが、玲央奈は一笑に付す。


「太郎、そんな悠長なこと言っていたら、後れを取っちまうぞ! うおっ⁉」


 快調に走るストロングライオンの足下付近が爆発する。


「玲央奈さん⁉ 大丈夫ですか⁉」


「な、なんとかな……それにしてもなんだ? 地雷か?」


「むむっ! 『まきびし型爆弾』を躱すとはやるな!」


 陰からやや小型な青いロボットが姿を現す。


「でも足止めにはなったわね! 雷蔵さん!」


 別方向から青いロボットの同型機と思われる赤いロボットが現れる。ウルリケが呟く。


「ああ……確か、じぇいが流忍術保存会だったか、ロボチャン三重代表の……」


「慈英賀流だ! じえいだ! ちいさい“ぇ”ではない!」


「Iの伊賀でもKの甲賀でもなく、Jの慈英賀と覚えて頂ければ嬉しいです!」


 赤いロボットから女の声がする。


「万代! だからそれではむしろ話がややこしくなるだろう!」


「はっ! ごめんなさい雷蔵さん、私ったらまた……」


「……悪い、ぶっちゃけすごいどうでもいいわ」


 玲央奈が素直な感想を口にする。


「ど、どうでもいいだと⁉ 貴様も慈英賀流数十年の歴史を愚弄するか!」


「数十年って、結構短いじゃねえか、そりゃ知らないわけだわ……なあ、お前ら……」


「す、凄い! 忍者だ! 初めて見た!」


「ジャパニーズニンジャロボットとは伝統とテクノロジーが見事に調和しているね~」


 太郎とベアトリクスは嬉しそうな声を上げる。玲央奈が呆れる。


「お前らなあ……」


「なかなか見所のある若者たちだな! 忍術を駆使した攻撃を喰らうが良い!」


「!」


 青いロボットと赤いロボットが素早い動きで攻撃を仕掛けるが、奇異兵隊のロボットはすんでのところでこれを躱す。雷蔵と呼ばれた男は感心する。


「志渡布殿によって、潜在能力を引き出された今の我々の……『青炎』と『赤炎』の連携攻撃を躱すとはやるな! 流石は野生児軍団と言ったところか!」


「誰が野生児だ、誰が!」


「ワンダフルなスピードとコンビネーションだった……見とれるところだったよ……」


「トリクシーお前な……気持ちは分かるが……」


「いや、分かんのかよ!」


 ベアトリクスをたしなめるかと思いきやほぼ同意するウルリケに玲央奈が突っ込む。


「し、しかし、何故に志渡布傘下に⁉ こんな見事な忍術があるのに!」


「志渡布殿は真大和国樹立の暁には、忍術を国民のたしなみとし、さらにその中心に慈英賀流を据えてくれると約束して下さった!」


 雷蔵が太郎の問いに答える。玲央奈が呟く。


「またくだらねえ理由だな……」


「くだらないとはなんだ! マイナー流派の悲哀を知るまい!」


「そんなこと知るか! いたずらに騒乱を巻き起こすのが気に食わねえ!」


「むっ!」


 ストロングライオンが青炎に噛み付こうとするが、青炎がそれを紙一重で躱す。


「雷蔵さん!」


「余所見してて良いのか?」


「くっ⁉」


 ウルリケの乗るブレイブウルフが赤炎に飛びついて噛み付こうとする。赤炎は何とかそれを振り払おうとする。


「よし! ウルリケ! 赤いのは任す! 青いのはオレが! ベアトリはフォローだ!」


「ラジャー!」


 ベアトリクスの乗るパワフルベアーが両者のフォローに動ける位置につく。太郎の乗るプリティーラビットのセンサーに反応がある。


「ウルリケさん!」


「むっ⁉」


 赤炎の背部の箱から青炎らよりさらに一回り小柄な紫色の機体が飛び出し、ブレイブウルフに攻撃を加える。急襲を喰らったブレイブウルフは後退する。雷蔵が叫ぶ。


「でかしたぞ、太助! それでこそ慈英賀流の立派な跡取りだ!」


「だから立派な跡取りとか勝手に決めんなし……」


 紫色の機体から、少年の声が聞こえる。ウルリケが舌打ちする。


「ちっ、もう一機いたのか……」


「『紫炎』だ……跡取りとかどうでもいいけど、母さんに手を挙げた借りは返すよ……」


 紫炎が苦無を構える。太郎が困惑する。


「ただでさえ手強いのにもう一機だなんて……」


「ビビんな太郎! お前も含めれば、4対3だ!」


「だから玲央奈さん! 僕の機体は索敵メインなんですよ! 頭数に入れないで下さい!」


「今からでも戦闘メインになれ!」


「そんな無茶な……ん⁉ 玲央奈さん! トリクシーさん!」


「うおっ⁉」


「ワット⁉」


 陰から飛び出してきた青炎と同じくらいの大きさの黄色いロボットと紫炎と同じくらいの大きさの緑色のロボットが同時に攻撃を仕掛けてきた。小規模だが爆発が起こり、ストロングライオンとパワフルベアーが倒れ込む。


「手裏剣型爆弾のお味はいかがかしら?」


「ちっ! 新手かよ⁉」


「『黄炎おうえん』と『緑炎りょくえん』! 間に合ったか、よく来てくれた! 春子、弥生!」


「……」


「ど、どうした⁉ 二人とも⁉」


「貴方の為じゃありません、慈英賀流の為に来たのです……」


「つーか、名前呼ばないで、ウザい。もう他人なんだから」


「おおっ、そ、そうか……すまん」


「なんだ⁉ 仲間じゃねえのか……妙によそよそしい雰囲気だな!」


「な、仲間なんてものではない、同志だ!」


 玲央奈の言葉に雷蔵が答える。春子と弥生が口を開く。


「同志でもありません。単なる元夫婦です」


「つーか、ママ……だからアタシこの人と合流すんの嫌だったんだけど」


「お、お前ら……」


「色々複雑な事情があるんですね……」


「変に理解を示すな、太郎! 大体家庭の事情なんてもん、戦場に持ち込むな!」


「と、とにかく、我らの連携で貴様らを始末する!」


 青炎たちが素早い動きを見せる。太郎が驚く。


「な、なんというスピード!」


「めんどくせえ! オーナーから許可は出てる! 合体すんぞお前ら! 太郎!」


「み、皆さん、合言葉は⁉」


「「「「ケモ耳は正義!」」」」


「なんだ⁉ 合体した⁉」


「「「「獣如王、見参!」」」」


「一機の巨大ロボに⁉」


「まとめて狩ってやるぜ! 喰らえ!『獣王爪刃じゅうおうそうじん』!」


「ぐはっ!」


玲央奈は叫ぶと同時に獣如王の右腕を振るう。鋭く大きな爪から放たれた衝撃波が五体のロボットに直撃する。倒れ込んだ五体が地面に開かれた黒い穴に吸い込まれていく。


「あ! 逃げられてしまった……気持ちを切り替え、味方の援護に行きましょう!」


 太郎が指示を出し、獣如王は別の方角に向けて猛然と走り出す。

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