第33話 友の気遣い
エトムント殿下とエミーリアのところに向かう。邪魔にならないと良いけど。
「エリーザ嬢」
先に気が付いてくれたのはエトムント殿下だった。私を見るなり笑顔になる彼に胸が高鳴る。
剣が折れた直後は落ち込んだ様子を見せていたけど元気になったみたいで何よりだ。おそらくエミーリアに励まされたのだろう。好きな人に励まされて元気にならない人はいないのだから当然だ。
「先程は情けないところを見せてしまったな」
エミーリアの側を離れてこちらにやって来たエトムント殿下は申し訳なさそうに告げた。
あれは彼が悪いわけじゃない。考えなしで打ち合いを始めてしまった私が悪いのだ。
「いえ、そんな事は…」
「自分の魔法が優れていないと分かっていたがあそこまで酷いと思わなくて迷惑をかけてすまない」
「謝らないでください」
エトムント殿下は決して魔力が弱いわけじゃない。
ゾンネ王国の平均魔力量を知らないので口には出せないが十分過ぎる魔力を保有していると思う。
やはり問題は使い方だ。おそらく保持している魔力が強いせいで制御が難しいのだろう。
ただ彼が悪いわけじゃない。育ってきた環境のせいでまともな魔力制御を身に付けられなかったのだ。
ゾンネ王国がもう少しだけ魔法に精通していれば良かったのに。
「次は折られないようにする」
「リアに教わればすぐに魔法を使いこなせるようになりますよ」
エミーリアはクラスメイトに魔法を教える事がある。
教えるという行為に慣れているのだ。エトムント殿下は成績が優秀な方だと聞いているし、すぐに魔法を使いこなせてしまうはず。
集中する為にも私は邪魔かもしれない。
そう思っているとエトムント殿下から変な事を言われてしまう。
「私はエリーザ嬢からも魔法を教わりたいと思っている」
「え?わ、私よりリアに教わった方が…」
「武器にかける硬化魔法や身体強化の魔法はエリーザ嬢に教わった方が良いと言われたぞ?」
何を余計な事を言ってるのよ!
エミーリアを見ると得意気にウインクを貰ってしまう。普段はそんな事をする人間じゃないくせに。
私に気を使ってくれたが分かるので文句は言えない。
私が黙り込んでいるからかエトムント殿下は不安そうな表情をこちらに向けた。
「もしかして駄目なのか?」
「い、いえ…」
幼い頃から教わっている為、得意だけど教えるのは少し難しい。どう教えたら良いのか分からないのだ。
こんな事になるなら図書館に行った時、人に魔法を教える教科書みたいな本を借りれば良かった。
「教えるのは良いですけど準備をさせて貰いたくて…」
「問題ない。今日はリアに魔法制御の基礎を教わるからな」
「分かりました。準備をしてから教えますね」
「助かる」
とりあえず帰ったら屋敷の本棚を漁るところから始めた方が良さそうね。
騎士の家系なのだ。そういった類いの本は大量にあるだろう。
考えている間にエミーリアのところに向かおうとするエトムント殿下が居るので一言かけたくなった。
「頑張ってルド兄様に勝ちましょうね」
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