幕間5 諦めたくない※エトムント視点
エミーリアに駆け寄ると服が肌蹴ており、ちらりと下着が覗いていた。それを隠したのはクリストフが着ていた上着だ。
見られるようになった彼女を起こす。
寝起きだからかとろんとした瞳で私を見つめてくる彼女に胸が熱くなる。
「リア、平気か?」
「ん……えと、むんと、でんか?」
ああ、可愛い。
不謹慎であると分かっていたが寝起きの彼女は可愛かった。
「リア、大丈夫か?」
「クリス、わたし…」
「もう大丈夫だ」
クリストフが彼女を縛り付ける縄を解いた瞬間、見たくない光景が広がった。
「クリス…!」
エミーリアが自らクリストフに抱き着いたのだ。
普段の飄々とした姿はなく一人の女の子としてクリストフに抱き着き、安心した様子を見せるエミーリア。
その姿を見れば誰だって分かってしまうだろう。
彼女はクリストフが好きなのだ。
といっても本人に自覚はなく、無意識的に彼を一番としているのだろう。
ああ、クリストフには敵わない。
そう思ったがエミーリアを諦める選択肢もなくてどうしようもない気持ちだけが胸の奥を燻る。
「孤児院に帰ろうか」
クリストフの声にエミーリアが頷く。
彼はエミと呼ばれる孤児院の少女をエミーリアの腕の中から片腕で抱き上げた。
「リアは起きたばかりでフラつくだろ。僕が運ぶよ」
「ありがとう」
照れ臭そうに笑うエミーリア。視線を下げると二人は手を繋いでいた。
まるで平民の家族のような幸せな光景に疎外感を覚え、自分が混ざってもいいのだろうかと悩む。
元々、今はクリストフとエミーリアの時間だ。
邪魔者は退散するべきなのだろうと思ったがそれを止めたのはエミーリアだった。
「エトムント殿下。よろしければこの国の孤児院を見て行ってください」
「私が行っても良いのか?」
「是非!」
キラキラした笑顔に私が断れるわけもなく頷いた。
クリスを見たら複雑そうな顔をしていたけど、エミーリアの提案を無碍に出来ないらしい。
「クリスも良いでしょ?」
「仕方ない」
自然にクリス呼びをするエミーリア。前に聞いた話だと小さい頃はその呼び方が当たり前だったらしい。
私との間には存在しない多くの思い出がクリストフとの間には存在しているのだと認識させられた。
「言っておくけど僕達の邪魔をしないでくれよ」
「恋敵の邪魔をするのは当たり前の事だろ」
「今は僕の時間だ」
軽口を叩きながら孤児院に向かう。
到着するとエミーリア達の帰りを待っていたのか子供達全員で出迎えてくれた。
皆に囲まれる二人を見たら、ますますお似合いな二人だと認めざるを得なかった。
この国の未来の王と王妃に相応しい二人。
それでもやっぱりエミーリアを諦めたくない。
クリストフに邪魔をするなと言われたが我慢が出来なかった。
「リア、好きだ」
子供達が離れた隙を見て、彼女に近づき告白をする。
告白を受けた張本人も隣に立っていたクリストフも驚いた顔をこちらに向けた。
「リアが好きだ。愛してる。どうか私の妃になってくれないか?」
今すぐ了承を貰えなくても良い。
少しだけでも私を意識してくれたらそれで良いんだ。
私は諦めが悪い人間だから。
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