幕間③ 怒り※クリストフ視点

ガゼボに着くとリアを座らせてから紅茶を出すように指示を出す。


「リアはどうしてここに来たの?もう王子妃教育は終わったはずだよね?」

「いえ、それは…」


疑問に思っていた事を口に出すとリアはあからさまに動揺した表情を見せた。


「もしかしてアルバンに会いに来たの?」

「違います!」


それはないだろうと思いながら尋ねると即答されてしまう。声を荒げたリアを見たのは久しぶりだった為かなり驚いた。


「じゃあ、どうして?」

「陛下達に会いに来ました」


目を逸らしながら言うリア。

両親と彼女が仲良しなのは知っているので会いに来る事自体はおかしな事ではないけど、様子がおかしい。


「それだけ?」

「えっと…」


鋭く睨み尋ねるとリアは困ったような表情を見せた。


「話せない?」

「ちょっとだけ言いづらくて…」

「悩みがあるなら聞くけど」

「悩みというか…」

「僕に話せない事なの?」


好きな子に頼ってもらえない事が寂しい。

そう思っているとリアは諦めたように笑った。


「あの、クリストフ様、実は…」


リアから聞かされたのは弟の不貞話だった。

内容の酷さに怒りが湧き上がってくる。

浮気しておいて婚約破棄?あいつは何様だ。

苛立ちを抑え込むせいで無表情になってしまう。


「リア」

「なんでしょうか?」

「あの馬鹿にどんな制裁を加えるつもり?」


リアの話によれば婚約破棄を言い渡される前に婚約破棄をするらしいがそれだけでは生温い。


「リア。やるからにはちゃんとやろう?」

「あの、クリストフ様…?」


俺の様子のおかしさに気が付いたのだろうリアは動揺した表情を見せた。


「あの馬鹿は僕の大切なリアを傷付けたんでしょ」


大切で宝物のような愛おしい相手を傷付けられて黙っていられるわけがない。

許せるわけがないのだ。


「えっと、自尊心はちょっと傷付けられましたね?」

「愚弟も許せないけど、浮気相手の阿婆擦れ女も許せない」


どちらも徹底的に潰してやらないといけない。

にっこりと微笑みながらリアに自分の考えを伝える。


「馬鹿は観衆の中で恥晒しにしてやろう。ついでに王家を除籍でいい。阿婆擦れ女とくっ付ける手助けはしてやる。結婚したかったんだから感謝されるよ」


実の弟であるからこれまでは大目に見てやっていたが、大切なリアを傷付けようとする愚か者は不要だ。

ただ俺にも情がある。だから阿婆擦れ女との結婚を支持してやるのだ。

 

「散々リアのことを馬鹿にしてきたあの大馬鹿はもう邪魔だよね」

「いや、流石に除籍は…」

「僕は怒っているんだ。これくらいしないと許せそうにない」


リアは優しいからアルバンにも甘くなってしまう。

でも、俺は違う。


「大丈夫だよ。僕が婚約破棄させてあげるからね」


どうやってあの馬鹿を潰してやろうか。そればかりが頭の中を駆け巡った。

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