第16話 第一王子の復学
「そういえば、リア。クリストフ殿下が復学されるって話は聞いた?」
学園のガゼボでお茶をしているとエリーザに尋ねられた。
「この前会った時に聞いたわ」
先日クリストフ様が激昂した時、落ち着きを取り戻した彼に復学の事を教えてもらった。籍だけ置いての隣国留学だった為、彼がこの学園に通うのは初めてなのだ。
「ふーん、仲良いわね」
「そう?幼馴染だからかしら」
「リア、クリストフ様の婚約者になったら?」
エリーザのとんでもない発言に飲んでいた紅茶が気管に入って咽せてしまう。
背中を摩ってくれるのは嬉しいけど、貴女のせいでこうなっているのよ。
「どうして私がクリストフ様の婚約者になるのよ」
「だってクリストフ様、婚約者いないしリアとお似合いだし」
「理由になってないわ。そもそも私には婚約者がいるのよ」
「婚約破棄しようとしてる婚約者がいるわね」
「そうよ。だからクリストフ様とは婚約しないわ」
全く変な事を言わないでほしい。
まだ喉の奥がヒリヒリするわ。
「結構お似合いだと思うのだけど…」
「それは嬉しいね」
後ろから聞こえた声に今度は二人して紅茶を吹き出しそうになる。振り返れば笑顔で手を振るクリストフ様の姿があった。
なぜ彼がここにいるのだ。
私が尋ねたい事を表情から読み取ったのか本人が答えてくれる。
「今日から復学したんだ。カルラ、僕にも貰える?」
カルラにお茶を強請りながら私の隣に腰かけるクリストフ様。その光景を見て頬を緩ませるエリーザがいた。
「リア、僕と婚約する?」
「結構です。変な事を言わないでください」
「残念。気が変わったら言ってね」
気が変わっても言えません。
そもそも婚約者様との婚約を破棄して、その後に兄と婚約って私が王族との結婚に執着してるみたいじゃないですか。
周りから大批判が来ますよ。
「私は応援してますよ、クリストフ殿下」
「ありがとう、ビューロウ伯爵令嬢」
応援しないでください。
そしてそれに応えないでください。
「それにしても今日から復学だったんですね」
「リアがアルバン《バカ》に傷付けられないようにする為に早めに復学させてもらったんだ」
「愛ですね~」
さっきから私とクリストフ様をくっ付かせようとするこの空気は一体なんでしょうか。
確かにクリストフ様の事は素敵な方だと思う。だからこそ私みたいに馬鹿な婚約者を貶めようとする狡賢い最低女は似合わない。
「あ、そうだ。ずっと言い忘れてた事があったんだ」
「なんでしょうか?」
真っ直ぐ私を見てくるクリストフ様に尋ねる。
「リア、ただいま」
「……おかえりなさいませ、クリストフ様」
挨拶くらいで嬉しそうな笑顔を見せないでください。
さっきの会話のせいでどうしたら良いのか分からなくなるじゃないですか。
「仲良いわね」
エリーザの楽しそうな声が響いた。
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