第9話 オールポジション
「と言うことでまずミーナの戦闘スタイルから育成方針を決めたいと思います。はい、拍手」
「イェーイ。パチパチパチパチ」
俺の宣言で笑顔で拍手をするミオネと対照的に引き攣った顔をするミーナ。
まず、パーティーを組むにして役割を明確にすることが大事だと俺とミオネは幼い頃から教え込まれていた。
なので、基本的には俺もミオネもオールラウンダーで戦える。森にいた頃は、親父が死んだ日にミオネは思うことがあり、魔法だけじゃなく接近戦にも力を入れるようになった。
インファイトからヒットアンドアウェイ。ただ、力技ではなく、柔術を主体とした戦法を確立した。
それに比べて、俺は前世の影響でゴリゴリのインファイトを多用していた。
もちろん、いずれは両方を確立したいがまだ【異界伝承】の使用を禁止されている分、地力を鍛えることを主とした。
2人パーティーならスイッチ戦法を使用してミオネとのコンビネーションを上手く使い、体力の温存をすることが可能だった。
だが、3人となった今ではミーナの戦闘スタイルによってはローテーションスイッチ戦法を行う必要があり、その辺の連携が確立するまでは討伐依頼は受けることをしないつもりでいた。
「それでミーナはどう言う戦闘スタイルなわけ?」
「決まってなかったら何がしたいかとかでもいいからね!」
ミオネが胸の前で握り拳を作りフスンと鼻息を漏らす。うん、可愛い。
「そ、そうねぇ〜私は弓と細剣を使うわ。基本的には弓で援護して近付かれたら細剣に切り替えて戦うつもりだったわ。でもあなた達を見ていたら弓だけでもと思うわ」
どうやらミーナもオールラウンダーだったらしい。
「ならミーナもオールラウンダーとして鍛えるか」
「それなら、魔法も覚えて矢が尽きても打てるようにしてもいいかもしれないね」
「ちょ、ちょっと待って!!そんなに簡単に魔法が使える訳ないでしょ!?」
俺とミオネの会話にミーナが遮って来た。
それを不思議そうな目で見ていた俺たちにミーナは説明を始めた。
「魔力は誰にでもあるけれども魔法を使うには適正属性があってそれを使うにも長年の訓練が必要なのよ?それをあたかもすぐ使えるかのように話してるなんて私、そこまで才能ないのよ?」
なんか初めて聞く話ばっかりだぞ?
俺とミオネは、訓練を開始したときから普通に使えてたんだけど・・・
「それマジ?俺とミオネは、全属性使えるぞ?確かにミオネが闇属性を苦手にしているから適正はあるかもとは思っていたけど基本はイメージだろ?」
「えっ?本当に言ってる?」
ミーナは、あり得ないという目で俺たちを見る。そんなに信用ないかなぁ〜。
そんなことを考えていたらミオネが口を開く。
「ミーナちゃんは、魔力感知って出来る?」
「えぇ、少しだけなら」
「そっか。なら見せた方が早いね!」
ミオネは、そう言うと手から全属性の魔力の塊を出した。
「いや、ミオネ。あなた、さらっと凄いことしてるの自覚ある?無詠唱に並列操作、魔術師の祈願を実現させているのよ?」
驚くことに疲れたのか遠い目をしながらミーナは呟いた。
それに対してミオネはキョトンとした顔をしていた。
「そんなに難しいことなのかなぁ〜?ユーダイ君、どう思う?」
いや、キラーパスされても困るんだけど。
けどやりようはあるんだけどなぁ〜。
「あぁ〜、たぶん固定概念のせいじゃない?俺らって出来るのが当たり前だったし。暴論だけどミーナを全属性使えるようにするの俺なら簡単だけど、そうなると母さんの許可が必要になって来るしなぁ〜」
そう言うとミオネが真っ赤な顔をしてモジモジし出した。何をするかってのを察したんだろうな。
「そのぉ〜、ミーナちゃんのためだし、私たちもそろそろそう言うことしてもいいと思うの。だからユーダイ君、使っちゃお?」
その言葉を聞いて俺は一瞬で頭の中が真っ白になった。そして叫んだ。
「はい!!!喜んで!!!」
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