第一戦 3
激しい攻勢を受けていたジグムントの足元には、両足を中心にした亀裂ができていた。
強く踏み締めていたその足を軽く上げ、粉々になった石のかけらをふるい落とす。
その内の砂つぶほどに細かくなった石は、エルマの風魔法に乗って、カラカラと軽い音を立てて辺りを転がっていく。
その様子を、ジグムントはジッと見つめ、何やら思案していた。
興奮の声で満ちる広場を、ゼライツは物言わずに眺めていた。時折、懐中時計を取り出しては、時間を計っているようだった。
「これ以上石畳を痛めたら、ゼル、怒る?」エルマがおずおずとゼライツに問いかける。
「まあ、あまり好ましくはありませんね。しかし、ジグムントのあの顔を見る限り、想定の範囲内ですし、何より今の彼に苦言を呈しても意味はないので、今回は見逃しましょう。その代わり、後片付けは特にしっかりさせますよ。」
「想定の範囲内、ね。この後私たちの対戦なんだから、荒れたままにしておくのはやめて欲しいわ。」
レーゲは呆れたようにため息をついた。
「これ以上色々壊して散らかさないうちに、早く決着をつけようか。」
再び間合いを図るように向き合う両者。ルヴェンの剣から吹き上がる炎は、すでに白く輝いている。
噴水の水しぶきは、その燃え盛る炎によって蒸気となり、靄が辺りに立ち込める。
二人の影が靄に消える瞬間、石畳を焼き叩く音と共に、ルヴェンはジグムントに詰め寄り、斬りかかる。
「っ!痛・・・!」
突然、ルヴェンが弾かれたようにジグムントから離れた。巻き上がっていた火柱は、細かい火の粉となって霧散した。
一気に決まると思っていた観衆は、一体何が起こったのか分からず、振り上げた応援の腕を下ろせずにいた。
「ふむ。散らかり方によっては、上手くいくものだな。」
靄が晴れたジグムントの周りには、鋭く尖った砂が薄く広がっていた。
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