第一戦 2
細かい火の粉を纏わせた剣を素早く打ち込んだかと思えば、次の瞬間には強い火勢を伴う斬撃を仕掛ける。ついに吹きだす炎は、青白さを帯びはじめる。
ジグムントの鎧は、その熱を吸い込んでジリジリと焼け付き、陽炎に揺れる。
同時に、観戦する者たちの応援の声にも更に熱が入る。
「ふむ、困ったな。このままでは防戦一方だ。さてどうしようか。」
熱気に包まれた広場でただ一人、ジグムントは涼しい顔でポツリと呟いた。
見た目は容赦なく叩き込まれているはずのルヴェンの攻撃は、的確に受け流され、全く彼自身には効いていないようだ。
「ルヴェンの鎧のように、この鎧はあまり炎魔法に対して強くないのだから、修理が必要なまでに壊すのは勘弁してほしいものだ。」
「広場の噴水に比べれば安いものだろ。何ならいっそ、これを機に新調したらどうだよ。」
「確かにな。結構長く使っているから、それなりにガタが来ている。しかし、コニーが許してくれるかな。」
「ルーグの侍従長か。そりゃ難しいだろうな!」
熱で歪んだジグムントの肩当ての隙間に、ルヴェンは鋭く突きを加えた。
鈍い音を立てて、重なり合った部品が外れ、空中に舞う。
焼けた石畳に激しく落ちる鋼の音が、雷のように響き渡る。同時に、ルヴェンはジグムントへの猛攻を止め、素早く距離を取った。
噴水の水が落ちる音だけが辺りに広がった。
その一瞬の静けさの後、広場は歓声に包まれた。
「ルヴェン様!ルヴェン様!」
「豪炎一閃のルヴェン様!」
勇姿を称えるその声に、ルヴェンは俄かに口元を緩め、改めてジグムントを睨む。
「ふふん。まずは一つ。順番にその硬い殻を壊してやるからな。」
「やれやれ。許しを乞う前に、今度はコニーに怒られることが確定してしまった。覚えていろよ、ルヴェン。」
重厚な構えを解き、ジグムントは苦笑いしながら頭をくしゃりと掻いた。
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