第一戦 1

ジグムントとルヴェンは、噴水を中心に睨み合う。一歩踏み出す毎に、ルヴェンの持つ剣から、チリチリと細やかな火花が溢れ、エルマの操る風に乗って舞う。

レーゲの操る水の柵に触れては、シュウシュウと音を立てながら、薄く白い煙となっていく。


煙がゆらりと揺れたかと思ったと同時に、ルヴェンは一瞬で間合いを詰め、ジグムントに仕掛けた。

二人の剣が激しくぶつかる音が響き渡った。ルヴェンの後には光跡がのび、迫り合う刀身からは煌々とした炎が巻き上がった。

その攻勢を、ジグムントは穏やかな顔色ひとつ変えず往なす。その場から微動だにしていないその姿は、まるで大岩のようだ。


「あちち。ルヴェンの炎は相変わらず、とても熱いな。それに、一撃が前よりも強くなっている。また一段と腕を上げたな。これは油断できないぞ。」

「そりゃどうも。チッ、また初撃でジギーを動かせなかった。どんだけ硬いんだ、あんたは。」


 激しく打ち合う光景に全く似合わない、のんびりとした口調のままのジグムント。しかし、踏み締めた足元の石畳は、メキリメキリと砕けそうな音を立てる。

 ルヴェンは、そのままの勢いで追撃を加え続けている。動ける隙が全く無さそうに見えるその攻防に、観戦する者たちは黄色い歓声をあげる。


 「ルヴェン様が得意なのは、見ての通り炎の魔法なんだ。吹き出す炎の勢いを使って、一瞬で間合いを詰めて攻撃する。まさに二つ名の通り、『豪炎一閃』ってわけさ!」

 「対してジグムント様が得意なのは、土の魔法だよ。あんな風に、地面を固く踏み締めて、まるで地盤と一体化したように、体を硬く、重く出来るんだ。そのまま繰り出される重い剣の一撃は、まさに『剛力無双』さ!」

 「あれほどの魔法を使うだけでも、とても難しいことなのに、四騎士の皆様は、それに加えてあの剣技だもの。普段からどれほどの訓練を積んでいるのかしら!」

 「ルヴェン様!ジグムント様!頑張ってください!」


 応援する檄は、ますます大きくなり、それに応えるように、二人の攻防も激しさをより一層増していく。

 

故郷で使われていた炎や土の魔法とは比べ物にならないほど、大質量を伴う目の前の光景に、アンナもイリスタも、ただ圧倒されるばかりであった。

 そしてナグもまた、模擬試合は噂には聞くが、観戦は叶うまいと思っていた故に、いつまでも目を離せずにいた。

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