模擬試合 1

「王国警備隊長模擬試合」

 グラブダ王国が、如何に文武両道の堅牢な盾と鋭敏な剣で守られているのかを示す催しである。国内外問わず、開催される際には、その技術の高さを一目見ようと、多くの者がその場所に見物にやってくる。

 グラブダ王国の象徴ともいうべき王立学院の、その新入生たちにも、当然その勇姿は披露される。加えて、通常の模擬試合よりも近距離で観戦することが出来る。

 故に、万が一に備え、国内きっての警備隊員が周りを防護しているのだという。


 「前回は、ジグムント様対レーゲ様、ルヴェン様対エルマ様の組み合わせでね。ジグムント様の技で噴水の一部が壊れてしまって、怒ったレーゲ様が地下水を吹き上げさせてしまって。その後のルヴェン様の技が思うように出せなくなって、それでエルマ様が手加減を間違えて、周りの木を全部折っちゃって・・・。誰も怪我しなかったし、とても盛り上がったんだけど、後で皆様、ゼライツ様に怒られちゃったんだって。」

 「特にジグムント様はゼライツ様と親戚同士だから、こっぴどく・・・。」

 今から始まる光景が如何なるものか見当もつかず、ぽかんとした顔の新入生たちに、上級生たちは悪戯っぽく笑いながら、説明をしていた。

 

 「はっはっは。いやはや、去年を知る学生たちには敵わないな。確かに興に乗りすぎてしまったのはあったがね。それにしても全く、ゼルは手厳しかった。」

 朝日の似合う明るい笑い声を伴い、最初に広場の中央に進み出たのは、ジグムントだ。

 「大らかなのは貴方の良いところですが、行きすぎてはいけません、と注意したまでです。」ゼライツは肩をすくめ、呆れたように言葉を返した。


 「まあ、今回は気をつけるさ。」

 ジグムントはそう言いながら、既に準備運動を始めていた。その目は、叱られても尚懲りない、悪戯好きの子供のようにキラキラと輝いていた。

 

 「コニーさんの言う通り、とても明るくて面白い方だね。」

 「うん。今度帰ってこられた時が楽しみね。」

 アンナたち三人は、クスクス笑いながら彼の姿を熱心に見つめていた。


 その視線に気づいたのか、ジグムントは三人に軽く微笑んで、朗々と声を響かせる。

 「我が名は剛力無双の騎士、ジグムント・ルーグ・フォン・ブラウシュタット。此度の模擬試合をお受けする。いざ尋常に勝負なり。」

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