四人の大公 2
「改めて、皆さんおはようございます。初めての学院での夜はよく眠れましたか。」
朝日に照らされた、真白な王城を正面にする噴水の前で、ゼライツは集まった新入生たちに一日の始まりの挨拶を告げた。
広場の端には、時間を持て余している上級生たちが、何かが始まるのを待っているかのように、こちらの様子をしきりに伺っていた。
「楽しみだねぇ。」「今回はどういう組み合わせなんだろう。」「前回も凄かったけど、更に磨きがかかっているんだろう。」「早く始まらないかなぁ。このために今日早起きしたんだから。」
彼らの目線の先は、四人の武官のようだ。武官たちは、その声に応えるように、軽く手を挙げては微笑みを浮かべていた。
「本日最初は、学院、ひいてはグラブダ王国が、如何に文武両道を修めているかを知って頂こうと思います。」
そういうとゼライツは、人差し指を中空に挙げて、何か文字を書くように滑らかに動かした。すると、光の帯が指を追うように現れ、指の動きに合わせて、くるくると形を作っていく。その光に向かって、風が流れ込んでいく。
軽く頬を撫でるほどに穏やかに吹いていた風は、次第にその勢いを増し、その場にいる全員の服を大きく翻らせるほどになった。
新入生たちの驚いた顔を、満足そうに見つめたゼライツは、ふいに指を動かすのを止めた。すると、先ほどまでの大風はピタリと、朝の日差しの中に散って行った。
「今皆さんにお見せしたのは、私が最も得意とする風の魔法です。そもそも魔法というものは、自然界のエネルギーを操る技術のことを指します。この技術は、普段の生活にもとても有利に働くものです。更に言うならば、個人の技量に上乗せ出来れば、それは何者にも折れぬ剣となるのです。その剣を持って、我がグラブダ王国は、繁栄を続けてきました。」
四人の武官は、その言葉を合図に、スラリと金の剣を構える。
「こちらは、グラブダ王国を支える四大公家、王立警備隊の隊長の方々です。剣の腕はさることながら、魔法の技術も王国を代表するほどの力を持っています。と、言葉で伝えても分かりづらいでしょう。」
ゼライツが言おうとする次の言葉を、待ちかねたという様子で、上級生たちが俄かに騒ぎ始めた。
「ここに、今年の『王立警備隊長模擬試合』の開催を宣言します。」
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