月面戦争:Round1

25.Round1−1 Side「かぐや姫」

 2025年4月5日。

 いきなり地球がもうひとつ増えた。

 月を挟んで反対側に、いきなり地球がもうひとつ増えた。


 そして、月を挟んだふたつの地球は、月の覇権をかけて争うことになる。


 月面戦争げつめんせんそうだ。


 月面戦争げつめんせんそうを行うにあたり、両、地球間では、様々な細かい協定が結ばれた。


 全てをげるとキリがないので、最も重要、かつ最も分かり易いルールをひとつだけ、取り急ぎ、ひとつだけ紹介しておこう。



 〜 条約1:月に生命を派遣してはならない。 〜 



 ふたつの地球は、互いに、もう、十二分に知性とモラルが発達していたのだ。

 ふたつの地球は、互いに、無用な殺戮行為を、でも避けたかったのだ。


 そして、その条約が結ばれた結果、ある一方の地球の命運は、たった一人の天才科学者、そしてその娘のパイロット、そしてその親友のオペレーターの少女のみにたくされることになった。


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 2027年6月1日。日本時間、正午。

 オペレーションルームに、ふたりの少女しょうじょがいた。


 ひとりの少女の名前は葛城かつらぎイルカ、淡くて青い甘々のロリータ服に身を包んだ少女だった。


 葛城かつらぎイルカは、もうひとりの少女の事を見つめていた。

 真剣に見つめていた。

 両手でを触りながら、真剣に見つめていた。


 もうひとりの少女の名は遊梨ゆうりユウリ。卜術家ぼくちゅつかだ。


 遊梨ゆうりユウリ目を閉じていた。目を閉じて集中していた。

 そして、目をみはるほどの豊かなを、葛城かつらぎイルカに両手で触られながら、目を閉じて集中していた。


 遊梨ゆうりユウリは、おもむろにタロットカードを3枚めくった。



  〜  9『隠者いんじゃ』 の位置  〜

  〜  1『魔術師まじゅつし』の正位置  〜

  〜 10『運命うんめい』 の位置  〜



「うんうん、今日もいっさいにごってない。に絶好調や!」


 両手でおっぱいを触られながら、タロットカードをめくった遊梨ゆうりユウリは、のんびりとした、トーンの高い関西弁で、コロコロと笑いながらしゃべった。


「……うん」


 葛城かつらぎイルカは、頬をあからめて、口を押さえながら「ぽつり」と返事をした。


 警報ブザーが鳴り、ふたりの少女は持ち場につく。

 月にあるロボットを、地球のオペレーションルームから、遠隔操作えんかくそうさをするためだ。


 葛城かつらぎイルカは叫んだ。


「『オルカ Mark-III』出撃します!」


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 月のハッチから、一体のロボットが飛び発った。


 全高ぜんこう64メートル。

 16たいのマシンによる、高速合体変形こうそくがったいへんけいを実現した、スーパーロボットだった。




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