第24話『護衛クエスト』
護衛クエスト。
それは護衛対象を無事に目的にまで送り届けるまで護り通す重要任務である。
例で言えば、あの輸送馬車にくっついていた冒険者達がそうだ。
主に盗賊とか、妖魔とかから守り、目的地に無事辿り着けるようにサポートするのだ。
難易度は、その道中の地形、どのレベルの妖魔の出没ポイントを通過するのか、盗賊の出没情報によって変わり、応用力を試される。
とはいえ、今回は俺とターリャの二人で出来るレベルだから、そこまで苦ではない。
妖魔と盗賊は出る可能性もあるけど、対処はできる。
(道に出る妖魔のレベルはたかが知れてる)
道具屋で必要なものを買い揃え、準備する。
もちろんターリャにも教えながら。
「こう?」
「そうそう」
ターリャは飲み込みが早い。
まだ退治が出来ないけど、半年も立てばヒナウサギ(※翼のあるウサギ。とても美味い。)くらいは一人で仕留められるようになるだろう。
ギルドに来た。
護衛クエストはボードには個人情報がアレなので貼り出されていない。
ならばどうするのか。
「こんにちは」
「こんにちは。今日はどうされました?」
「短期間、低レベルでの護衛の依頼はありますか?」
「少々お待ちください」
こうやって受付に聞きに行くのだ。
「隣街に帰る際に付き添ってほしいというものがありますね。3日~5日ほど。妖魔の目撃情報はありません。盗賊も無いですが、警戒のチェックが入ってます」
「警戒チェックですか」
これは、その付近では見てないがそちらに向かいそうな連中を見た、というものだ。
いないかもしれないし、いるかもしれない。
そんなレベル。
「いつからですか?」
「できるだけ早いうちと、なんなら明日からでも」
急ぎなのかな。
依頼を受理した翌日、その依頼人がギルドへとやってきた。
指定された時間前には待機していた俺とターリャは、時間ピッタリにやってきた依頼主を見て驚いた。
「なによ、なんか文句あるの?」
ターリャ程の女の子だった。
赤いスカーフに、手にはバスケット。
身なりは良い方。
商人の娘クラスだろうか?
「わあ!可愛い服!」
「!」
女の子がターリャの言葉にビクッとした。
そして一気に赤面。
「そ、そうよ!私は可愛いのよ!」
なんだか解らんが機嫌を良くしたらしい。
「えーと、君が依頼人のクロス・ルビーアーさんで間違いないかな」
「そうよ!あなた達が冒険者?」
「そうです!」
「……」
ターリャが元気良く返事したのにたじろぐクロスさん。
俺に対して威張りたかったのに、ターリャに阻止されて戸惑っている。
やっぱりターリャと合同で良かった。
しかし、なんでこんなに小さい子が一人で隣町へ…。
資料を見れば、おつかい、ってあるが…。
(この子の親は、どんな感性なんだ?)
今のご時世、大人でさえ隣街に移動することも危険といって集団行動するのに。
記載されているのが、一人。
つまりこの子だけ!
放任主義過ぎると思うのだが、もしかしてここら辺ではこれが普通なのだろうか。
と思ったけど、周りを見る限り俺達の話を聞いている人達が唖然としていたり呆れていたりしているから違うなこれ。
つか、これちゃんと報酬金貰えるんだろうか。
そんな疑惑が浮上したとき、バタバタと受付の人がやってきた。
「はあっ!はあっ!、トキ様!ちょっとこちらへ!」
「???」
手を引かれて受付に連れていかれる。
クロスさんはターリャがいるから大丈夫だろう。
「え、なにその親怖い」
案の定大富豪の娘だった。
で、報酬金はすでに全額振り込み済み(通常なら、前金後金と分ける)
「ええ、なかなか癖の強い依頼人でして…、要望としては平民の生活を体験させたいとかで……」
「…………平民。ちなみにどのレベルの…?」
「おそらく……貴族のピクニックレベル……」
平民とは???
こりゃあ、妖魔の肉なんて出したら反感買いそうだな…。
仕方がない。
「おねーさん。ギルドでキャンプセットって貸出ししてますか?」
やるだけやってみますか。
クロスさんにいくつかのお約束を結ばせ、いざ出発。
歩くのは嫌だと駄々をこねるかと思ったが、思いの外そんなことはなかった。
むしろスキップまでしている。
「クロスさん!道とはいえ、茂みは妖魔が出ます!あまり離れないでください!」
「ふん!なによ!妖魔を何とかするためにあなた達を雇ったんでしょ?そのくらい何とかしなさいよ!」
問題は、結構わがままなところだ。
「はぁー、すまんターリャ、付いていてやってくれ」
「はーい!」
そんな感じで丸々1日歩き、(途中で足が疲れたと駄々をこね始めたので、休憩過多)わざわざ店から調達した食糧で食事。
それにターリャ、(え、これご飯?)という顔をされた。
これもご飯です。
しかもいつもよりも高めのやつ。
「ふん!まあまあね!口の中がパサつくわ!お茶ちょうだい!」
「はいどうぞ」
それでも文句を言われる。
まぁいいさ、どうせ数日の付き合いだ。
という感じで3日後。
疲れたー!疲れたー!と喚くお嬢を宥めながら道を進む。
(本来なら、もう到着している筈だったんだよなぁ…)
頻繁に休憩を入れるから予定よりも延びてる。
「もう!馬車で行きたい!!馬車呼んで!!」
「無理です」
「あのね、馬車は予約してチケット買わないといけないのよ?」
「そんなこと無いもん!私が呼んだらすぐくるのよ!」
じゃあお願いします、と言いたいが、言葉を飲み込んだ。
「!」
何かの気配を感じた。
「ターリャ、賊だ」
「! わかった!」
クロスの所へいき、盾を構える。
「え?え?なに?」
「お嬢さん。お約束を覚えてますか?」
「覚えてるわ!」
「では、その3のお約束をお願いします」
「!?」
ピクリとクロスの肩が跳ねる。
お約束その3は『盗賊が出た時はターリャの側から絶対に離れないこと。トキの言うことを必ず守ること』というもの。
それは、出るはずの無い盗賊が現れたことを意味する。
「ちょ…ちょっと話が違うじゃない…!」
「クロスちゃん、静かにね」
「うう…」
顔色を青くしながら、クロスはターリャにピッタリとくっついた。
すると、森の中から男達が数名やってきた。
風貌はいかにも盗賊的な容姿だ。
DQN的なものから、やくざ的なものもいる。
視界に入る盗賊を観察する。
基本装備は剣だ。
「はははは! よーう、そこの兄さん、大人しく身ぐるみを剥がされて貰おうか」
「大丈夫大丈夫!出すもん出したら、命だけは取らないでおくからさ!」
全部で9人。
隠れているのがいなきゃ良いけど。
「断るといったらどうなります?」
ゲラゲラ笑い出す盗賊達。
各々武器を取り出し、俺へと向けてきた。
「そりゃあ、命ごと貰うしか無いわなぁ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます