第22話『ターリャの初クエスト』
最後まで船員達の勧誘が止まらず、最終的に甲板から海に飛び込んで撒いた。
幸いなことにターリャの方に意識が向いてなかったので、ターリャは無事に下船し、指示通り近くの砂浜で待ってもらった。
全くもう、酷い目に遭った。
ターリャがこっちに向かって手を振っている。
「トキー!こっちだよー!」
「ふぅー……」
服の水を絞りながらターリャの元へと向かう。
万が一にとバッグを預かってもらってて正解だった。
「大変だったねぇ、タオルいる?」
「いる」
タオルで拭きながら着替えた。
「さて、着いたな」
シーラ港街。
ウナンズ町で聞いた話だと、大変お魚がおいしい所だと聞いた。
これはターリャが喜ぶ。
早速定食屋に行きたい所だが、その前に。
「どっか真水のある所に行こう」
海水と潮風でベトベトだ。
もちろん船の中には真水なんて飲み水以外に無かったからさっさと体とか頭とかをスッキリさせたい。
「さんせーい!」
海岸沿いに歩くと運良く川を発見。
少し遡って真水なのを確認してから、さくっと体を洗い、服も洗った。
「いくつか魔導具買っててよかったな」
「ね!便利だね!」
乾燥させる魔導具。
サンドメーカーは主婦や旅人の味方だ。
洗った洗濯物の中に入れておくだけで、一時間程で洗濯物が乾いてしまう。
もちろんそれなりの値段がするのがご愛嬌。
明日はどうすっかな。
そのまま移動してもいいけど、せっかくだからターリャにクエストを慣らしておきたいってのもある。
「ターリャ」
「なに?」
「……いや何食べてんの?それ」
「トキが倒してくれたゴードヴォンドの燻製」
「……なるほど」
確かにあのあとゴードヴォンド回収して刺身や燻製にしてた。
刺身がめちゃくちゃ美味かったな。
というかまだ全部食べて無かったのか。
いや、話が逸れた。
「ターリャも冒険者になったんだし、クエスト受注しようと思うんだが、やるか?」
「へ?ターリャも、トキみたいに出来るってこと?」
「そういうこと」
「……」
目が泳いでる。
予想していた反応と違うな。
「……怖くない?大丈夫?ターリャ食べられない?」
ああ、そうか。
失念してた。
「ターリャはまだ採取クエストしか受けられないから安心しな。それに俺がいるから何かあっても大丈夫だ」
「そっか」
ホッとしたらしい。
とはいえ、それでも丸腰で挑ませるのは忍びないので、片手剣を購入アンド装備させた。
「ん?」
ターリャの体格、年齢ではあまり武器の種類がないからな。
かといって弓を持たせるわけにはいかない。
練習させてないし、俺に飛んできたら怖い。
「思ったよりも重いんだねぇ」
「もともと解体用のナイフを渡す予定だったからな。盾がメインだ。立ち回りは…、とりあえず俺のを見て参考にしてろ」
「うん」
盾と剣に釘付けで俺のこと見ない。
そうとう気に入ったみたいだ。
軽く立ち回りを教えてからギルド行くか。
というわけで、ターリャに軽く立ち回りを教えてからギルドへ行った。
ボードに張り出された依頼書を見る。
採取関係はキノコとか魚とか薬草。
ここら辺はいつもやっているから、ターリャのクラス内でもうちょっと難易度上げて。
「あ、レインボウ・スネークの卵の回収があるな」
「蛇の卵?」
「そうだ。このレインボウ・スネークの皮は装飾品になるし、卵は美味しい。けど、最近は数が増えすぎて害魔認定されてるんだ」
「物知りだね」
「まぁな」
ハズルでも結構出てたし。
さて、せっかくだし俺もレインボウ・スネーク関連の依頼を。
「あったあった」
ちょうどレインボウ・スネーク討伐の依頼も見つけた。
「行くぞ、ターリャ」
その討伐依頼書とターリャ用の依頼書を剥がして受付に向かう。
「はい来ました、目的地」
「岩だらけだね」
「そうね」
街近くの森を抜けたところに、岩場がある。
そこがレインボウ・スネークの棲みかになってる。
ここに棲んでるレインボウ・スネークが近くの村の農作物を食い荒らしているらしい。
一年に一回くる繁殖期で取れる卵は7つ。
そんなに多く卵を産む訳じゃないんだけど、産まれてしまえば子蛇が強くてどうにもならない。
でも卵取るだけならそんなに苦ではない。
睡眠煙で眠らせたらしばらくは起きないからその隙に一個残して回収する。
絶滅はさせないのかって?
そこは、ほら、皮職人と色々あったらしいし。
今回は討伐もあるから頑張って煙焚かないと。
「ターリャがやる!!ターリャがやる!!」
「待て待て」
初クエストでテンション上がっているのは分かるけどちょっと待て。
ライターで火種を作り、バッグからクワスレ草を取り出す。
「これを火に被せて」
「わかった」
「被せたらこの団扇で煙を岩場へ扇いで」
「はーい」
パタパタと煙を上手く岩場へ流すターリャ。
センスいいな。
試しに燻製作らせたら絶品を作るかもしれない。
「こんな感じ?」
「うん。上手い上手い。この調子であと五個作ってみよう」
「5個…!?」
え、という顔されたが、そんな顔しても数は減らんぞ。
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