第120話 日記△〇年〇△月31日……中断?

―フィリップスの日記より―


△〇年〇△月29日



王太子殿下がどんな人かは兄さんから聞いていた。何でも騙され上手らしいが本当にそうなのか調べてみた。すると、近しい人や側近の人たちからは「正義感が強いけど煽りが酷い」「優位を確信していると調子に乗りやすい」「身内には優しすぎる反面、敵対する者には容赦しない」という評価だった。


正義感あるけど結構癖のある人物のようだ。更に気になった私は自分の目で王太子殿下を見てみた。もちろん、遠巻きに。


「よ~し、お前ら~、今日も生徒会の仕事始めるぞ~!」


「「「「「おおーっ!」」」」」


「あっ、でも、働きすぎに注意しろよな。隙を見て俺みたいに毒を盛られたら、たまったもんじゃないしな! ほどほどにしよう!」


「「「「「あははははははっ!」」」」」


……これが王太子? なんていうか、お気楽で調子がいい人のようだ。でも、結構気さくな面もあって身内に優しい人格者のようだ。コミュニケーション能力が高くて、成績優秀の文武両道。しかも結構美形な顔立ちをしている。それでいて体格はしっかりしている。これは周りに慕われる人のようだな。


それにしても、兄さんはこんな人に毒を盛ったのか。しかも、その罪を他人に着せて





「わああああああああああああああああああああああああああっ!?」


「「「「「っ!?」」」」」


「ちっ(いいところで騒ぐなよ)」


突然、ベーリュは悲鳴のような高い叫び声をあげた。国王は余計な音をされて舌打ちする。何しろ、ベーリュのせいでこの場にいる全ての者たちが驚かされて、途中で中断されてしまったのだ。


宰相が読み上げるフィリップス・ヴァン・ソノーザの日記に記された多くの事件の真相を。その中心人物がベーリュ・ヴァン・ソノーザを指しているという事実を。


「おいおい、どうしたのだ? ソノーザ公爵よ、いや、ベーリュ?」


「はぁ、はぁ……!」


まるで労わるような感じで声を掛ける国王だが、本心では愉快で仕方がなかった。しかも、顔に英すら浮かべている。それもそのはずだ。国王の瞳に映るベーリュ・ヴァン・ソノーザの顔は、若き日の国王が正義感から叩きのめしてきた不良や悪人たちの絶望した顔と全く同じなのだから。


「(素晴らしい! 素晴らしいぞベーリュ! お前のような悪人をここまで追い詰めて、そんな顔を見せてくれるなんて! こんなに心躍る日は久々だぞ! もっとも、私を……俺をだまし続けてくれたことは絶対に許しはしないがな!)」


一方で、国王の心の中には激しい怒りも燃えていた。何しろ、若い頃の自分のミスでとんでもない男を公爵にまでつかせてしまったのだ。ベーリュ・ヴァン・ソノーザに対する怒りと共に、ジンノ・フォン・ウィンドウは自分自身にも怒りを抱かずにはいられなかった。


「(お前は俺が裁いてやる。あの頃の多くの事件の罪はお前が元凶だが、お前を部下にした俺にも責任があるのは間違いないんだ。お前に、お前たちに罰を下すことこそが俺の国王としての、上司としての責任だ。しっかり厳しい罰を受けてもらうぞ。くくくくくくく……)」


……しかし、一方で自分の欲にも駆られていた。それが現ウィンドウ王国の国王ジンノなのだ。息子たちが癖のある性格に育ったのは彼の影響なのかもしれない。



====あとがき====


申し訳ありません。ちょっと内容を整理したいという思いがあるので九月の更新は少し後からにします。



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