第92話 次の行動に?

だが、そんなことは一部の者は望まない。それは『元』婚約者のカーズやサエナリアを尊敬するナシュカ、ここに居るレフトンとその仲間たちがそうだ。更にサエナリアの侍女に執事のウオッチもそれに加わっている。これほどの人物たちがサエナリアの味方になっているのだ。


だからこそ、ソノーザ家の家庭においてサエナリアが不遇な境遇だったことを証明して、世間に同情される状況を作る必要があったのだ。そのためにもソノーザ公爵家の不祥事の証拠と有力な証言が必要だった。


特に王族の発言がかなりの切り札になる。今日、レフトンが言った通り、サエナリアの不遇な環境をその目で見た王子が二人になったのだ。第一王子カーズと第二王子レフトンの二人。これで裁判の時に王族の発言が二人分になるわけだ。それらの証拠と証言をそろえるためにわざわざレフトンがやってきたのだ。


「(いや、兄貴は、今……)」


……もっともその時にカーズが平常心を取り戻していればいいのだが。カーズはレフトンとナシュカに打ちのめされた後だった。だが、レフトンは後悔はしない。カーズはそれぐらいしないと反省しそうになかったのだから。


「(……まあ、兄貴は親父とお袋にソノーザ家で見て聞いたことを全部話したみたいだがな。あの日記も親父たちに渡ったみたいだし、親父たちも若い頃の自分たちの節穴ぶりを後悔して動き出すだろう。最悪、俺の発言だけでいけるかもしれねえがな)」


「これで最低限の目的は果たしてくださったようですが、もう少しサエナリア様のお部屋をご覧になりますか?」


「いや、これ以上はいい。こんな物置でも女性が過ごした部屋だ。男が本人の許可もなく見て回るなんて無粋なまねはしない。お前らもそう思うだろ?」


レフトンはエンジとライトを振り返っていった。話を振られた二人は複雑な顔で同意する。


「……そうだな。これ以上はいいだろう(本当にサエナリア様が過ごしたどうか微妙なところだが、無粋なのは確かだしな)」


「ソノーザ家の罪を暴く証拠はもう十分王家に渡っているし、同意するよ(それにしても、この部屋の位置は……もしかして、父さんの……?)」


二人から確認を取ったレフトンはニヤリと笑って、次の行動に移ることにした。


「そうか、なら後はソノーザ公爵に会うだけだな」


「……わざわざ会う必要があるのかい?」


「……俺は殺してやりたい気分なんだがな」


側近二人が顔をしかめる中、レフトンは怒りを込めた笑顔を見せて言い放った。


「宣戦布告ってやつさ」


「「…………!」」


「「…………」」


怒りながら笑うという器用なことをするレフトンに、誰も何も言うことは無かった。


「せっかくだ。一言挨拶してやるだけさ。爺さんにミルナさん、それくらいいいだろ?」


「「…………」」


笑顔でそんな提案を口にするレフトンに対しソノーザ家を裏切った二人の使用人。ウオッチはそのままの意味だと思った。


「どれぐらい構いませんが……?」


「……挨拶とは?」


ミルナの方は何かあるなと思って聞いてみたが、レフトンははぐらかす。


「さあな。こんな家の主にふさわしい挨拶ってだけさ」


「そうですか(ただのあいさつで済みそうにないですね。まあいいですけど)」

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