第82話 耳を澄ます?
「おや?」
何かに気付いたライトは目を瞑って耳を澄ます。なるべく聴覚に集中しようとしているのだろうか。
「どうしたライト?」
「……二人とも、耳を澄ますと何か人の声が聞こえるよ。屋敷の中の方が騒がしいみたいだよ」
「ん?」
「何?」
ライトにそう言われてみて、レフトンとエンジも耳を澄ましてみた。すると確かに屋敷の方から壮年くらいの男性と女性が激しく口喧嘩しているような声が聞こえてくる。
「…………おま……せい……どう…………!」
「…………あな……むす……あい…………!」
「「…………(この声……)」」
……結構、激しく罵り合っているようにも聞こえてくる。ソノーザ家で起こったことを知る彼らなら言わなくても大体のことは察するが、ライトはあえて皮肉っぽく推察を述べた。
「……どうやら夫婦喧嘩しているみたいだね。それともソノーザ家で残ってる馬鹿親子三人で騒いでるんじゃないかな。いや、二人分の声しか聞こえないから夫婦喧嘩かな?」
「まっ、そんなところだろうな……」
夫婦に親子と聞いて、レフトンは嫌いな人物三人の顔を思い浮かべた。一応顔は知っているから嫌でも見当がつく。この屋敷の持ち主の家族の顔だ。実際に聞こえてくる声は聞き覚えのある声だからまずは間違いないだろう。
「夫婦喧嘩だってんならソノーザ公爵夫婦のものだろうな。元から歪んだ家庭がついに崩壊したか。まあ、自業自得だろうが、もう少し後にしてほしかったな。醜くて仕方がねえや」
「同感だ」
レフトンは顔を歪ませながら面倒くさそうにするが、用事があるので屋敷に入ることにしている。その直後、屋敷の扉が開いて初老の男性が現れた。身なりからして執事のようだ。
「おいレフトン。あれは、ソノーザ公爵の側近の執事じゃないか?」
「よく見ると顔がやつれているね。ソノーザ公爵家が没落するのを察しているんだね」
エンジとライトは少し警戒するが、レフトンは初老の執事を憐れむように見ていた。
「まあ、あの人は残るだろうな。こうなることは分かっていたんだし」
「何?」
「レフトンそれはどういう……?」
エンジとライトは訝しむがレフトンは気にせずそのまま執事に声を掛けた。穏やかな笑顔を浮かべて気さくに接する。
「お疲れ様っすね、執事の爺さん。それにしても愚かなご主人様のせいで毎日大変そうっすけど、今日は世話になります」
「これはこれはレフトン殿下、ご足労おかけいたします。旦那様のことでしたら、全くその通りですよ。おかげさまで私やミルナをはじめ多くの使用人にも苦労させられております。もう少し優しい心を持ってくださっていればと何度思ったことか……」
「大変そうっすけどもう少し頑張ってくださいな。あんたの主ベーリュ・ヴァン・ソノーザの悪事もここまでで終わらせてみせますから」
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