第77話 整理できず?
マリナが役員に連れていかれてから、ナシュカ達は第一校舎に戻ることにした。ただ、三人はしばらく無言だった。頭の中がなかなか整理できず、何を言えばいいかまだ分からなかったのだ。
「「「………………」」」
だが、いつまでもそういうわけにもいかなかった。最初にバートが口を開いた。
「な、なんか、驚かされまくったよな。色々と………」
「そ、そうですね。衝撃的なことばかり………これからのことを考えなくては……」
「………………」
ぎこちない感じでバートが話を振って、それに同意するバイラ。何とか会話をする二人だったが、ナシュカは何も答えられなかった。彼は現在進行形で様々なことを考え続けていたのだ。
「(マリナ様は……何故……サエナリア様と同じ言葉を……。同じ人じゃないのに同じことを言ってくれて……。二人は一体どういう……。友達……だから……?)
しかし、今のナシュカは先ほどのことで動揺しているままだった。普段の彼らしくもなく考えがまとまらない。
(カーズ兄さんのことも……不正と思い込みは後でいいけど……兄さんに改めて聞いて……)」
普段のような冷静沈着で頭脳明晰という状態に戻れなかった。それだけにマリナが口にした一言が頭に離れなかったのだ。
かつてのサエナリアが自分にかけた言葉と同じだっただけに。
「ナシュカもそう思うよな? ……おい?」
「ナシュカ様?」
側近の二人が声を掛けてもナシュカは反応しない。様子がおかしいと感じた二人は顔を見合わせる。
「(いや、違う。僕が考えるべきことは……何だ? このままサエナリア様を探すべきか? それとも他の……)」
「おい、ナシュカ!」
「ナシュカ様!」
「へ!?」
二人の呼びかけにナシュカはようやく振り返った。もっとも、気が付いても様子がおかしいままでいるのは確かだ。
「ナシュカ、どうしたんだよ?」
「どうかなさったのですか!?」
「あ、ああ、バートとバイラか。僕はちょっと考え事してて……」
ナシュカは答えながらも二人を見ていなかった。それに気づいた二人は更にナシュカに詰め寄った。
「その考え事ってなんだ! さっきのマリナ様が言ってたことと何か関係あんのか!?」
「そ、それは……」
バートに肩を掴まれたナシュカはバートと目を合わせる。バートはとても真剣な顔になっていた。更にバイラも同じような感じでいる。
「あの時、ナシュカ様はとても動揺していましたが私達にはその理由がわかりません。どうかナシュカ様が驚かれた理由をお聞かせ願いますか?」
「…………」
二人は真剣だ。本気でナシュカを心配してくれている。そんな二人を見てナシュカはやっと落ち着いてきた。
「……ごめんね、心配かけたね。いくら何でも驚きすぎたよ」
「それはもういい。だから、」
「分かっている」
ナシュカはバートの目を見て答えた。
「教えるよ。僕がものすごく驚いた理由をね。ここじゃなくて三人きりでいられる部屋で話そう」
第一校舎に戻ったナシュカは決心がついた。
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