第74話 悩むべき事実?

「……そ、それは事実で?(嘘だろ?)」


「間違いありません。サエナリア様はいつものことだしカーズ殿下だから仕方がないと笑って気にしていませんでした」


「…………」


ナシュカは嘘であってほしいと心の底から思いたかったが、マリナは残酷に事実だと口にした。ナシュカの希望が打ち砕かれた。


「ま、マジなのか!?」


「そんなことを、王太子殿下が!?」


「残念ながら間違いありません」


ナシュカに続き側近二人も確認を取ったがマリナははっきり答えた。この時のマリナも人形のように表情がない。


「……そうですか(なんてことだ。もし、事実なら学園内におけるカーズ兄さんの成績は間違っている。ていうか、何か納得できるぞ。元々思い込みが激しい大馬鹿だったんだ。そんな男が成績がいいなんて話はおかしいと思わなくちゃいけなかったんだ。思えば、あの人はいつも肝心な時に頭が回らなかったしな。これで色々と合点がいったよ……搾取か。カーズ兄さんには呆れたよ)」


ナシュカは頭を抱えた。カーズに対してサエナリアのことで失望していたが、マリナに聞かされた事実を信じて更に失望が深まったのだ。同時に更に悩むべき事実だと思った。


「(こんな事実は、学園側に告発すればどうなる? 王家に更に泥を塗ることになるぞ。でも、告発しないわけにもいかない。隠していくほうが罪だ。そもそも、男爵令嬢のマリナ様が知ってしまっているんだ。カーズ兄さんの他に知っている人が他にいてもおかしくない。宰相の息子もカーズ兄さんの側近だし、一体何してたんだ? ……こうなると問題はどんなタイミングで告発するかだな)」


「(おいおいおい、マリナ様を調べるつもりだったのにどうしてカーズ殿下の更なる不祥事を聞かされてんだよ。ていうかカーズ殿下何してんだよ……)」


「(ナシュカ様がこんなに悩まれて……。なんとおいたわしい……。やはりカーズ殿下はダメ人間だった……)」


側近の二人も頭が痛くなった。カーズの不祥事は許せないが、それ以上にナシュカが頭を悩ますことになったことがつらいのだ。


「あの、ナシュカ殿下? 大丈夫ですか?」


目に見えて悩むナシュカを気遣うマリナ。流石に衝撃が大きいことを理解しているためか、彼女は本気でナシュカを心配しているようだ。無表情から明らかに心配そうな顔になっていた。


「……大丈夫です、とは言い難いですね(カーズ兄さんが嫌いになりそうだからね)」


「申し訳ありません。カーズ殿下については余計なことまで話しすぎたようです」


「いいえ。貴重なお話をしていただいて感謝しています(身内の隠れた不祥事だ。知りたくなかったけど知らないわけにはいかない)」


ナシュカは本気でマリナに感謝していた。貴族社会を理解している者であれば、王家の人間の不祥事を話すどころか人前で口にするなど、よほどの勇気がなければできないのだ。そうでない者ならば、よほどの馬鹿しかいないがマリナは間違いなく馬鹿ではない。だからこそナシ

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