第19話 経緯?
ワカナが連れ出されて、客間にはカーズとベーリュだけとなった。
「………さて、どういうことか聞かせてもらえるだろうな? ソノーザ公爵」
厳しい視線を向けるカーズを前に、次女のありさまを見られてしまったベーリュは全てを諦めていた。これ以上隠しとおすのは無理だと判断したのだ。
「はい。もう覚悟を決めました。全てをお話しします。実は、数時間前にサエナリアが書置きを残して我が屋敷を出て行ったことが判明しました。私はその知らせを受けて、すぐに屋敷に戻りました。妻と使用人たちから詳しい話を聞いて、初めて事態の深刻さを知ったのです」
「やはりワカナ嬢の言っていたことは事実だったということか。サエナリアは今はいないのだな」
カーズは厳しい顔になる。婚約者がいなくなった原因に思い当たる節があるのだ。それもまた、愚かな御令嬢ワカナが口走ったおかげなのだ。
「ソノーザ公爵家の家の問題のようだが、何があったんだ? 深刻というのはどこまでなのか詳しく知りたいな。最初から最後まで話してくれ」
「全ては私達夫婦の教育方針に問題があったのです。私達は……」
◇
「……という経緯が発覚したのです」
「…………っ!」
ベーリュは真相を話した。娘たちの教育の全てを妻のネフーミに任せっきりでいたこと。ネフーミが自分に似たワカナを溺愛する傍らで、サエナリアにほとんど構ってやれなかったこと。そのせいで姉妹で違う環境、違う境遇、違う育ち方、違う性格が形成されたこと。
そして……。
「後は最初に私が話した通りでございます。我々に愛想尽かし、書置きだけ残して出て行ったのです。今思えば、サエナリアが出て行ってしまうのも仕方のないことでしょうな。……私達夫婦は愚かな親でした」
「何ということだ、長女を蔑ろにして次女を溺愛してきたとは……! その結果、サエナリアが身分を捨てて出て行き、あのような愚かで阿呆な次女が公爵家に残ることになったというのか……!」
カーズは驚愕の真実を聞いてしまった。ベーリュの話を要約すると、サエナリアは今まで家族の愛を十分に得られずに育ち、遂にはそれが耐えられなくなって、自身の気持ちを書き記した書置きだけを残して去っていったというのだ。今の地位も名誉も、生活も立場も捨てて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます