第106話 有川七海の日常⑥

 四月も下旬となり、すっかりと桜も散ってしまっていた。

 今日はあの二人と定例会の日。

 私たちはこうして月に二回、中旬と下旬に会うことにしている。私は大学がどんなに忙しくても、この時間は大事にしてる。それは、二人も同じだった。

 

「もう大学に入って一ヶ月が経つのか~」

「早いよね~」

「そうね」

 

 私たちは陽彩がバイトをしている『蓮』で定例会を行っていた。

 三人とも一人暮らし(陽彩は獅戸君と暮らしているらしい)をしているのだが、この場所がちょうど真ん中なので『蓮』でしようといことに話し合って決まった。

 

「そういえば、獅戸君は?」

「今日は休み。というか、学校」

「姿が見えないと思ったら、そういうことね」

「ところでひーちゃん。つーくんとの同棲は順調なのかね?」


 愛理がニヤニヤと笑って陽彩にそう聞いた。相変わらず愛理はずかずかと相手のパーソナルスペースに入っていく。私たちはそれに慣れてるから、陽彩は気にすることなく笑顔で接していた。


「順調だよ! おかげさまで」

「そっか、そっか。よかった!」

「陽彩。ちょっと聞いてもいい?」

「ん、何?」

「誰かに恋したらどんな気持ちになる……?」

「「えっ!」」


 陽彩と愛理が体を乗り出して私の顔を覗き込んだ。

 そんなに驚かなくてもいいじゃない。確かに、高校生の時はそう言った色恋の話はなかったかもしれないけど。


「そんなに驚くこと?」

「そりゃあ驚くよ! ねぇ~。ひーちゃん」

「だね~。愛理」

 

 陽彩と愛理はお互いに顔を見合わせて嬉しそうに笑っていた。

 相談する相手を間違えたかもしれない。でも、私にはこの二人以上にこんな話をできる友達はいない。


「七海にも春が来たか~」

「私も恋したい~」

「ごめん。さっきのはやっぱり忘れて」

「今更、無理だよ~」

「で、相手は誰なの?」

 

 一度口から出たことは消せないらしく、しかもこの二人が逃してくれるとは思えなかったので、私は霧也さんのことを話した。

 私が霧也さんに憧れていること、霧也さんの写真を見て写真家にりたいと思ったこと、そして、霧也さんと一緒にいるとなぜか心がドキドキとすることを。


「それは、もう、ね~。ひーちゃん」

「そうね。もう、ね~」

「二人で顔見合わせてないで、何とか言いなさいよ」

「七海。それはもう恋してるわよ」

「そうだよ〜。なーちゃん」

「えっ・・・・・・」


 そうなのだろうか。

 私はすでに霧也さんに恋をしているのだろうか?

 でも、そうなのかもしれない。霧也さんと一緒にいて楽しいし、一緒に写真を撮れるのは幸せだ。もっと霧也さんの一緒にいたいって思ってしまっている自分がいる。

 そうか、私はもう恋をしているのか・・・・・・。


「七海は、その霧也さんって人と一緒にいる時、幸せ?」

「・・・・・・うん」

「もっと一緒にいたいって思う?」

「・・・・・・うん」

「じゃあ、それは紛れもなく恋だよ。七海はその霧也さんに恋してるんだよ」


 陽彩が真剣な眼差しでそう言った。

 恋の先輩である陽彩がそう言うのなら間違いないのだろう。

 私は霧也さんに恋しているらしい。


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