第84話
試練のという名の受験は終わった。
手応えは、ある。
というか、自己採点をしてみたが合格ラインを余裕で超えていた。回答の場所さえ間違えてなければおそらく大丈夫だろうと思っている。何度も見直しをしたので、その失敗もないと思いたい。
俺の方が先に受験が終わっていたので『蓮』で陽彩の帰りを待っていた。
「終わった~」
陽彩が疲労困憊の顔を浮かべて『蓮』に入ってきた。
俺はそんな陽彩のもとに近寄った。
「お疲れさん」
「翼もお疲れ」
「どうだった?」
「うん。バッチリ」
さっきまでの疲労の顔から一変、笑顔になってVサインを作った陽彩。
陽彩も何とか乗り切ったらしい。俺はホッと胸をなでおろした。
「翼のチョコレートのおかげで、頭がスッキリとしてスラスラと問題が解けた!」
「そうか。それはよかった」
「ほんとにありがと!」
「どういたしまして」
とりあえず、お疲れの陽彩を椅子に座らせる。
すると、すぐに朝美が陽彩のもとにやってきて抱き着いた。
「陽彩ちゃんお疲れ様~!」
「あ、ありがとうございます。朝美さん」
「ど、どうだった?」
朝美も陽彩の受験の様子が気になるらしく、緊張した様子でそう聞いた。
「たぶん、大丈夫だと思います。回答がズレてなければ」
「そっか~! とにかく、お疲れ様! 今日はしっかり休むのよ!」
「はい。ありがとうございます」
「翼ちゃんもお疲れ」
「ありがと」
「二人ともちょっと待っててね」
朝美はそう言い残すとキッチンに入っていった。
すると、朝美と入れ違いに今度は常連のマダムがやってきた。
「二人とも受験お疲れ様」
「ありがとうございます」
「あ、マダム。ありがとう~」
「頑張ったわね」
マダムは陽彩の頭を撫でた。
なんか、この二人めっちゃ仲良くない?
確かにマダムは常連だけど、こんなに仲良かったっけ。仲がいいのはいいんだけど、なんだかその様子は孫娘がおばあちゃんに甘えてるように見えた。
「そんな頑張った二人にはこれをあげるわ!」
そう言うと、マダムは手に持ってた有名な高級チョコレートのお店のロゴが入った紙袋を俺たちに渡した。
「ありがとっ! マダム!」
「すみません。ありがとうございます」
最近のマダムは何だかよく物をくれるな。
好意はありがたく受け取っておく。その分、ちゃんとお返しをしないとな。もらってばかりだと、申し訳ない。
「いつか、お礼しますね。この前の温泉のチケットの分と合わせて」
「いいのよ~。そんなこと気にしなくても、どうせ私はもうすぐ死んでしまう身なんだから、それに翼ちゃんと陽彩ちゃんは私にとって可愛い孫みたいなものだから。でも、そうね~。翼ちゃんの作るスイーツは食べてみたいかな~」
「もちろん、作らせていただきますよ。食べたいものがあったらなんでもいてください」
「マダム。なんでも言っていいよ。翼はなんでも作れるんだから!」
なぜか、陽彩が誇らしげにそう言った。
そんな様子がおかしかったのかマダムはクスクスと笑っていた。
「そうね~。なら、いちご大福が食べたいかしらね」
「いちご大福ですね。わかりました。任せてください」
「うん。楽しみにしてるわね」
マダムはそう言いうと『蓮』から出ていった。
俺と陽彩はその背中が見えなくなるまで頭を下げていた。
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