第56話
翌朝、目を覚ますと、俺の腕になにか柔らかいものがあたってる感触あった。
俺は重い瞼をゆっくりとあけた。
「え・・・・・・」
その感触の正体は陽彩の豊満な胸だった。いつのまに俺のベッドに潜り込んできたのか、浴衣が少しはだけた陽彩が腕に抱きついて眠っていた。その顔はとても穏やかだった。
寝顔めっちゃ可愛い・・・・・・。
じゃなくて!? どうでしこんな状態に?
考えられることは一つ。俺が眠ってる間に陽彩が潜り込んできた。簡単なことだった。
不可抗力だよな・・・・・・。
陽彩が勝手に潜り込んできたんだし・・・・・・。
それにしても、この状況はまずい。
理性を保てる自信がない・・・・・・。
なんとかして、陽彩を腕から引き剥がしたいけど、がっちりと腕を絡ませて力ずくじゃないと無理そうだし・・・・・・。かといって、力ずくで剥がして起こしてしまうのも申し訳ないし・・・・・・。
俺は一人葛藤していた。
そして、俺は諦める決断をして、もう一眠りすることにした。まだ、チェックアウトまで時間はある。もう少し、このままでも悪くないかもしれない。
俺はそう思って、再び瞼を閉じた。
***
「翼〜。起きて〜」
二度寝した俺は陽彩に体を揺すられて目を覚ました。
「ん〜。おはよ」
「おはよう」
時間を見てみるとさっき目を覚ました時から一時間が経っていた。
陽彩姿を見ると、さっきははだけていた浴衣をきっちりと直して着ていた。
「チェックアウトまで後何分だ」
「大丈夫。後、一時間はあるよ」
「そっか。俺すぐにすぐ準備する」
そう言って、俺はベットから起き上がると洗面台に向かい顔を洗った。
二度寝する前に見たものは夢だったのだろうか。
陽彩の反応を見てそう思ってしまった。
でも、たしかに感触はあったよな?
顔を洗ってシャキッとすると俺は部屋に戻った。すると、陽彩は浴衣を脱いで下着姿だった。
陽彩は赤色の大人っぽい下着をつけていた。
「おいっ! なに堂々と着替えてるんだよ!」
「え、ダメだった?」
俺が恥ずかしかっていると、陽彩はべつに見られてもいいよと言った感じで言った。
そりゃあ、昨日、タオル一枚の姿を見たけどさぁー。
それとはまた違って下着姿の陽彩は破壊力抜群だった。
「下着くらいでもう動揺したりしないよ。なんなら、もっと見る?」
陽彩が妖艶な笑みを浮かべて、色っぽいポーズをして俺を誘惑してきた。
「なっ!? 見ないから、そんなことしてないで早く服を着ろ!」
俺は下着姿の陽彩から目を逸らすと、自分の荷物の中から着替えを取り出して洗面台の中に逃げた。
昨日といい、今日といい、いきなり大胆になりすぎだろ!?
俺は高鳴っている心臓を沈めるように何回か深呼吸をした。
それにしても、あの姿は俺じゃなかったら襲われてるぞ。まぁ、俺を信用してくれて見せてくれてるっていうなら嬉しい気もするが。だからといって、襲ったりする勇気は俺にはなかった。
「翼。ごめん。調子に乗りすぎた。謝るから出てきて」
「別に怒ってなんかないよ。ただ、あんまりそういうの俺の以外の前ではするなよ・・・・・・」
「そ、そんなの、当たり前じゃん。翼以外に見せるもりはないよ・・・・・・」
「そ、そうか・・・・・・」
俺はさっさと着替えを済ませて洗面台から出て、陽彩顔を合わせた。陽彩は真っ赤に頬を染めていて、身につけている下着よりも赤かった。
「そろそろ、出よっか・・・・・・」
「そう、だな・・・・・・」
俺たちは気恥ずかしさを残して部屋を出るとフロントに向かってチェックアウトを済ませて、帰りのバスに乗り込んだ。
そのせいか帰りのバスは二人とも一言も話すことはなかった。
まぁ、いろんなハプニングがあったが、楽しい温泉旅館デートになったかな。
陽彩も同じ気持ちでいてくれたらいいなと思いながら、俺は窓の外を眺めていた。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
温泉旅館編終了。
次は文化祭編に入ります。
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