第42話
翌日、昼間は俺と陽彩は『蓮』の手伝いをしていた。
『蓮』の手伝いを終えて、陽彩は準備のためにいったん自分の家に戻っていった。
俺も、甚平を着るためにいったん家に戻って、もう一度、駅に向かった。
「あ! つーくんだ~」
俺が駅で待ってると、雛形と有川が駅にやってきた。
二人とも、当然というか、浴衣を着ていた。
「久しぶりだね~! てか、甚平着てる~」
「ひ、久しぶり」
雛形のこの誰にでもフランクに接する性格は、相変わらず苦手だ。距離感が近いんだよな。俺の肩をバシバシと叩いてくるし。まあ、友達思いのいいやつなんだけどな。そんな雛形は明るいオレンジを基調とした水色の花がいくつか描かれている浴衣を着ていた。
「獅戸君、久しぶり」
「久しぶり」
それに比べて有川はいつも冷静で落ち着いた性格。人との距離感の取り方がうまい。そして、雛形のストッパー役。有川は雛形の腕を引っ張って、俺から引き離してくれた。そんな、有川は落ち着いた雰囲気の黒の浴衣を着ていた。赤色の金魚が何匹か描かれていた。
「ひーちゃんは?」
「もうそろそろ来ると思う」
「そっか~。ところでつーくん。やっとひーちゃんに告白したんだって?」
雛形がニヤニヤと笑って言った。
「なんで、そのこと……」
「そりゃあ、知ってるよ! だって、ひーちゃんから、告白されたその日の連絡をもらったからだよー。ねぇー。なーちゃん」
「そうね。おめでとう。陽彩を幸せにしてあげてね」
「そうだよ。ちゃんと幸せにしてあげないと、許さないからね!」
二人が俺に詰め寄ってくる。言われるまでもなくそのつもりだ。
俺は大きく頷いた。
「三人ともお待たせ~」
そこでちょうど陽彩が到着した。
「あ、ひーちゃんだ!」
雛形は陽彩のことを見つけると、走って陽彩のところまでいって抱きついた。
「愛理。久しぶりだね。浴衣めっちゃ似合ってる!」
「ひーちゃんの浴衣も可愛いね!」
「ありがと」
陽彩が合流して、四人がそろった。
「それじゃあ、行こう~!」
雛形が腕を突き上げてそう言った。
二人ずつで前後に並んで会場まで歩いてく。雛形と有川は気を利かせたのか、俺たちの先を歩いていた。俺は陽彩と二人並んで歩いている。
「翼、どう? 私の浴衣姿?」
「よく似合ってるよ」
「よかった!」
陽彩が着ていた浴衣は、綺麗な朱色の浴衣だった。オレンジ色と黒色のバラが描かれていた。陽彩らしい浴衣だなと思ってた。
「赤色、好きなんだもな」
「覚えててくれたんだ!」
「忘れないよ」
「覚えててくれて、ありがと」
陽彩は嬉しそうに笑って俺の腕に自分の腕に絡ませてきた。
「お二人さん。熱いね~」
雛形が振り向いて俺たちを茶化してきた。
陽彩は、うるさい、と笑いながら雛形のもとに行って、軽くチョップを食らわせた。有川も楽しそうに笑っている。そんな様子を俺は少し後ろから見ていた。ほんとに三人は仲がいいんだな。まるで三人姉妹のようだった。
やっぱり、俺は来なかった方がよかったかもな。そんなことを思っていたら、陽彩が俺の隣に戻ってきた。
「花火楽しみだね!」
「……そうだな」
前を歩いてる、あの二人に悲しませるなって言われたしな。俺は、陽彩の隣を一緒に歩いて花火大会の会場まで向かった。
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