第28話
週明け、俺はそのマカロンを持って、最寄り駅で陽彩を待っていた。
「あれ、翼? どうしているの?」
「たまには、一緒に学校に行こうと思ってな」
「ふ~ん。てっきり、朝から私に会いたくなって来たかと思ったのに~」
陽彩はニヤニヤとした笑顔を受けべながら近づいてきた。
まあ、陽彩に用事があって会いに来たのだから、それはあながち間違ってはいなかった。
「で、どうしたの?」
「陽彩に会いに来たんだよ」
「え、マジだったの?」
「嫌だったか?」
「ううん。嬉しい……」
陽彩は頬を赤くして下を向いてもじもしとしていた。
「夏服に衣替えしたんだな」
「う、うん」
「その、気をつけろよ……」
「ん? 何に?」
俺は半袖カッターシャツを着た陽彩の透けている下着をチラッと見て言った。その視線に気が付いたのか、陽彩は胸のあたりを腕で隠して、顔を赤くしていた。
「もう! 翼のエッチ!」
「べ、別に見たくて見たわけじゃないから」
「それはそれで、なんか傷つく……」
「ご、ごめん」
「うそ、うそ、てか、翼になら見られてもいいし……」
語尾がどんどん小さくなって、うそ、うそ、しか聞き取れなった。どうやら、怒ってはいないらしい。俺は一安心した。
「で、なんで私に会いに来たのよ」
「あ、そうだった。これを渡そうと思ってな」
俺はカバンから、応援の気持ちを込めた赤色のマカロンを取り出した。なぜ、赤色にしたかは、陽彩が好きな色だって言ってたからだ。
「これって、マカロン? 翼が作ったの?」
「そうだよ」
「ありがと。でも、どうしたの? 何かあったっけ?」
「何かないと渡しちゃダメなのか?」
「ううん、そんなことない。てか、翼のスイーツが食べれるのは嬉しい!」
「そうか」
「食べていいの?」
「今食べるのか?」
「だって、早く食べたいんだもん!」
俺がいいよって言う前に陽彩は袋を開けて、マカロンを一口で食べた。
サクッ、サクッ、と心地のよい音が聞こえる。
陽彩はマカロンを幸せそうに食べていた。俺の気持ちは伝わるのだろうか。
「このマカロン、めっちゃ美味しい!」
「ありがと」
「なんか、よくわかんないけど、元気が湧いてきた。今なら何でもできそうな気がする!」
「あはは、大袈裟だな。その勢いで夢も叶えてくれ」
「だから~。それは翼君次第だって言ってるでしょ!」
陽彩が俺の鼻を人差し指で押した。
「この前も言ってたけど、それどういう意味なんだ?」
「秘密だよ~。今はまだね! 女は秘密を着飾って美しくなるんだよ」
「何だそれ?」
陽彩の言っている意味はよく分からなかったが、朝日を浴びた陽彩はいつも以上に美しく見えた。
そして、陽彩は学校に向かって歩き出した。俺は陽彩の横に追いついて一緒に歩いて学校に向かうことにした。
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