53 潜入!ジョージ電力会社③

 巨大なケーブルに繋がれて浮遊する風力発電機を横目に、義一は待合室のようなイスだけが置かれた建物に友仁を通した。


「どこ行くんだよ」


 少し不安がる友仁を地下へつづく階段へ誘う。下から吹き上がってくる風はカビっぽいにおいがした。


「禍ッ日之神が封じられてんのは地下三〇〇メートルだ。そこまで列車で行く」

「列車!? こんなところに列車が走ってんのか」

「ああ。それだけ地下深くに埋めないと、禍ッ日之神の影響は抑えられなかったんだろうな」


 それきり黙って階段を下りる友仁を義一は横目でうかがった。

 ホームに下りると一番線に列車は停まっていなかった。凰和が譲慈と翔に連れられて乗っていったのだろう。義一は足早に線路を渡って、二番線に停車する列車の運転席に回り込み、カードリーダーに社員証を通してドアを開けた。スイッチを入れると車内に照明が灯り操作盤のボタンが緑色に点灯する。制御は自動だ。義一はあと緑のボタンを押せばいいだけだった。

 義一はドア枠に手をかけて、銀色の車体をしげしげと観察する友仁を呼び寄せた。そのまま乗り込もうとする子どもを義一は体で阻む。文句が飛んでくる前に口を開いた。


「禍ッ日之神に近づけば瘴気の影響はデカくなる。子どものお前もひどい虚脱感に襲われるはずだ」

「そんなの構うかよ。俺は凰和様を助けたいんだ」

「その、凰和を助けたいって気持ちを頭から潰してくるのが瘴気だ」


 義一は指先で友仁の額を軽くつついた。


「頭ん中ボーッとして、なにも考えられなくなる。考えたくなくなる。そうなったら大事なのはここだ」


 トンッと友仁の胸に指先を置き、義一はしかとあどけない目を覗き込んだ。


「お前がここへなにをしに来たのかなんてことは考えるな。心で感じろ。凰和への思いを。生きていて欲しいっつう願いを」

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