第112話 許さない★

「よいしょっと」


 どさりと音を立てて地面に落ちた『それ』を少年は見下ろす。

 少し前まで騒がしかったが、ようやく静かになった。


「あ、そうだ。せっかくだからこっちも、同じ事しておこうかな」


 それのかつて『お腹』があった所を踏んでみる。

 ぴちゃりという音がする。

 腹から見えているあかいあかいもの。

 それらがこちらを恨めしそうに、じっと覗き込んできているようだ。


「ごめんねぇ。君達のご主人、駄目にしちゃった。だってこの人が彼女に、あんなひどいことするんだもん。でも、僕がそうする前にも彼は右腕を折られてたからさ。きっと彼が嫌いな人が、僕の他にもいたってことだよね」


 くるりと踵を返し、少年は次にすべきことを思う。

 

 さてと、あともう一人。

 あの子の左頬に傷をつけた奴。

 許さない、許さない。

 絶対に許さないよ。


 僕のなんだから勝手に触らないで。

 僕のなんだから簡単に触れないで。

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