第78話 ちがうばしょで(ある人物のヒトリゴト)

 それは品子達がいる所から離れた。

 遠い遠い場所。


 そこである人物が、独り言をつぶやく。


「おや、室さんの様子がおかしい。


 何でしょう?


 すごいフラフラしながら歩いてますね。


 ふふふ、なんだかとっても面白い動きしていますね。


 どうしてあんな風になったのだろう。


 今度、あの動きをやって欲しいって言ったらやってくれますかね?


 白日の人も同じようにフラフラしてるし。


 二人して何やってるんでしょ?


 面白そうだから、もう少し様子を見ていようかな。


 別にいいですよね。


 ただ面白そうかなぁって見ているだけですもの。


 だって今はこの間の壁を作る仕事と違って、別に何も頼まれていないですし。


 それにしてもせっかく作った壁、壊されちゃいましたね。


 奥戸の力が弱すぎるからでしょうね、きっと。


 まぁ、終わったことだし、どうでもいいんですが。


 あ、別々の方に行くんだ。


 どちらの方をみてようかな?


 うーん。


 よし、室さんの方にしましょう。


 どこに行くのかな?


 面白い所だと、いいですけどねぇ」


 響くのはその人物の口からこぼれた、くすくすという笑い声だけ。

 誰に聞かれるでもないその声は、するりと闇の中へと溶けていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る