【第十四話】魔法医師 ⑥
「ご理解いただけたかしら?コレが、私の言う情報が正しいという保証よ」
「「…………」」
このウィクシルはウィクシルで、規格外の力を持っていると思った。
シェルの気配察知も十分すぎるほどに反則技だったが、場所の把握だけでなく、そこにリアルタイムの映像を盗み見れるなど、あまりに神がかった能力だ。
居所を知られてどうこう言っている場合じゃない。
魔法こそが、この世界最大のチートだと思った。
「お前の狙いも聞いておきたいな。こんな映像まで見せて……まさかボランティア精神ってわけでもないんだろう?」
スパイルが尋ねる。
戦闘体制はそのまま、警戒も解かずに話しかけた。
今は、少しでも多く情報を集めておいた方が良いと判断したためだ。
「それは単純にお客様になってほしいからよ。商売をしている身としては当然じゃない?」
「それを間に受けるほどバカじゃねぇよ」
ウィクシルは先ほど、2人の怪我を即日で治せると言った。
本当ならすごいことだ。
病人や重傷者など、その恩恵を受けたい人間は後を絶たないはずーー。
何なら国や貴族に召し抱えられても全くおかしくない。
というより、もしコレを三大国の誰かが知れば、他国に渡らないよう躍起になるだろう。
手に入れようと勧誘や拉致を試みるだろうし、自分のモノにならないなら殺したっておかしくない。
そんな人間がお客に困っているなど、そんなバカな話はなかった。
「ふふふふ……。なかなかどうして……アナタは頭も回るのね。てっきり、タダの筋肉戦闘バカだとばかり思っていたわ」
「……………………」
「私にはね、野望があるのよ。この力……『魔法』を、世界中に浸透させるという、野望がね」
「へぇ……。そりゃあ良いことじゃないか」
「ふふ、そうでしょう?でもね……そのためには、どうしても邪魔な国が、"3つ"もあるのよ」
「おいおい……」
「特に、その中の一つは私にとっての最大の障害でね……どうしても戦力が足りないのよ。だから、私はずっと、アナタたちを待っていた」
「世界に向けて革命でも起こそうってのか?」
「あら?アナタたちは既に似たようなことをやっているはずよ?『雷帝』シェル・ローズに、『金属人間』ティアル・サーライト……。2人とも格好良かったわよ?」
「何だ……やっぱりそれもご存知ってわけかい……。こんな所でのんびり観戦とは、いい御身分だな」
「ふふふふふ、情報は力だからね。使えるものは何でも使わせてもらうわ」
ウィクシルは相も変わらず飄々とした態度だった。
スパイルと仲良く話しているように見えるが、その割にはまるで隙がない。
ある種、シェルやティアルに近い感覚すら感じていた。
恭司は様子を窺いながら、慎重に尋ねる。
「……それで?お前は情報の代わりに、俺たちを自分の手駒にしたいってわけか?」
ウィクシルは一瞬ポカンとなった。
そして、
理解すると、思わずプッと吹き出す。
「アッハハハハハハハハハハハハ!!まッさか!!そうなれば確かに素敵だけど、この程度で言うことを聞くような相手じゃないことくらいは分かっているわ。私は単に、"共に戦う同志"がほしいだけ」
「……?"同志"……?」
「そうよ、同志。私たちは互いに利用し合うだけの関係よ。別に指示をすることもなければ、言うことをきく義務もないわ」
「ほぉ……。なら……その同志として、お前は俺たちを、一体何に利用したいんだ?」
ピリッと、場が張り詰めた。
ウィクシルから凄まじい拍力が押し寄せ、恭司とスパイルは気を引き締める。
只事じゃない雰囲気に、仄かに混じる殺気ーー。
ウィクシルは、自らを律するように、静かに言葉を紡いだ。
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