【第十三話】ドラルスの街 ⑤

「あァァァァァァァァァらァァアアアアアアッ!!今日はずいぶんと可愛らしい坊やたちが来たものだわッ!!しっかりと接客してあ・げ・る❤︎ 」


「………………」


「………………」



キャラの濃さが尋常じゃなかった。


いわゆるオネェ系という奴だろうか?


完全に男でムキムキで、謎に裸エプロンをしてきている時点でほぼほぼ分かっていたが、実際に絡まれると途轍もない威圧感だ。


百戦錬磨の殺人鬼たちがたじろぐほどに、その迫力は凄まじかった。


例えシェルやティアル相手でも、こんな迫力は抱かなかっただろう。


正直、恐怖だった。



「今日は防具かしらァ?仕立てかしらァ?❤︎ とりあえずお悩み事は、何でも言ってねェん?」



2人揃って顔をひくつかせながら、恭司はスパイルの方をジーッと睨み付ける。


「任せとけって言ったよな?」と、その目は雄弁に語っていた。


スパイルはため息を吐き出すと、前に立つ。


今回も、スパイルが対応することになった。



「いや、あんま詳しい話はできないんだがな……。……率直に言うと、"変装用"の服が欲しいんだ」


「ッ!!」



恭司の目が驚きに大きくなった。


対応は任せたが、まさかそんなに直球に要望を伝えるとは思わなかったのだ。


この店員がミッドカオスやディオラスに情報を流したら終わりだ。


シェルやティアルが、大喜びでこのドラルスに兵を向けてくることになるだろう。


こうなれば、


最悪の事態を避けるためにも、この店を血の海に変える必要があるかもしれない。


恭司は刀に手をかけた。



「………………」



店員は沈黙する。


だが、


その目はスパイルにではなく、隣で殺意を滲ませる恭司の方に向いていた。


スパイルは落ち着いた様子で恭司の前に手を出し、制止のポーズを取る。



「……何のつもりだ?」



恭司の殺気が強くなった。


冷えた雰囲気が店中を覆い、冷ややかな殺意が体を震わせる。


手負いとはいえ、睡眠で一応は回復しているのだ。


店内には店員と従業員の2名しかいない。


このぐらいなら、1分も掛からずに皆殺しに出来るだろう。


問題があるとすれば、スパイルなわけだが……



「まぁ、落ち着けよ。ちゃんと理由はある」


「……?」



首を傾げる恭司に、今度は店員が大きくため息を吐いた。


やれやれと肩を竦める。



「困るわねェ……。こんな大事にしてくれちゃって……。どうやら"お分かりでない"みたいだし、事前に説明をする必要はあったんじゃなくって?」



店員は非難の目をスパイルに向けた。


スパイルは「ハハハ」と乾いた笑いを浮かべる。


恭司としては未だによく分からない状況だ。


何のことなのかサッパリ分からない。


店員は仕方なさそうに説明を始めた。

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