【第十二話】道のり ③
「はぁー、そんなことがねぇ……。日本国とミッドカオスがドンパチやらかしたってことついては知っていたが……。まさか生き残りがいたとは……。世の中分からねぇもんだな」
スパイルは恭司の話を聞いて、感心に耳を傾けた。
恭司の話もまた、スパイルと同じかそれ以上に興味深かっただろう。
シェルやバルキーの使う『落雷』のことや、『雷伝』という技法で居場所を察知されてしまうことーー。
さらに、
隠匿されてきたビス・ヨルゲンの力に、『王族狩り』がもたらした被害件数ーー。
どれも他国には決して流せない情報だ。
予想は当然されていても、直にそれを経験してきたという話はやはり参考になる。
ディオラスで騙し騙されを繰り返してきたスパイルにとって、情報とは力そのものなのだ。
「とはいえ、流石にやっぱ一番気になったのは、最後のビス・ヨルゲンの話だったがな……。ティアルが現れたらしいが、あの2人がぶつかったってんなら、まだそこで戦ってんだろうなぁ……」
スパイルは恭司に聞いた場所に目を向けた。
勿論、森に遮られて実際に見えることはないものの、ビス・ヨルゲンの名はスパイルでも知っている。
ディオラスでも半ば常識とされるくらいの要注意人物だ。
ミッドカオスはシェルやバルキーの力と存在感が大きい分、その次となるビスのことも相当に警戒されている。
流石にティアルに勝つほどではないだろうが、どうせいつも通り時間稼ぎに徹するだろうし、一方的にやられるということはないだろう。
恭司も同意を示した。
「俺は逆にティアルのことはそれほどよく知らないが……お前の話を聞く限り、そいつもシェルにも劣らない化け物ぶりだからな……。おそらくはそうなるだろう。だから、ここも早めに移動しないとな」
恭司はそう言うと、出した医療道具を片付けて、身支度を整えていった。
こうなればもう、この場所に長居すべきではない。
早急に移動する必要がある。
元々ここにいても怪我の応急処置以外にやることがなかったために、恭司はすぐに動き出した。
「あぁ、そうだな」
スパイルも当然、それに対して反対するようなことはない。
応急処置などの体の回復は別にここじゃなくても出来るし、今ここにいることが危険と分かった以上、当然の行為だ。
スパイルは同じように支度を整える。
そして、
2人とも準備が整うと、恭司はすぐに歩き出した。
「なら行くか。ここからだと『ドラルス』までそれなりにかかる。急ぎめに向かうぞ」
「了解だ。獣も多少は出るかもしれねぇが、俺らなら余裕だしな。ちゃっちゃと行ってしまおう」
そうして、
二人は嵐吹く中、夕暮れの森の中に入っていった。
薄暗くて不気味な雰囲気だが、2人ともこの程度で怖気付くような鍛え方はしていない。
道のりもまっすぐだし、両国から近い分、2人ともある程度場所は分かる。
道中はそれなりに話も弾んだ。
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