復讐の刃ーー独りになった少年が、世界を血の海に変えるまでーー

【第十一話】ティアル・サーライト 15

「こんなもんッ！！どう勝てばいいってんだッ！！」

もはや心境としては最悪の気分だ。

こんな状況、普通あり得ていいわけがない。

ダメージはあるのだからいつかは殺せるのかもしれないが、このペースならあと何万回必殺技を繰り返せばいいというのかーー。

どう考えても、ティアルが自分を殺す方が早い。

「カァァァァァァァァァァァァァァァァッ！！」

そして、

ティアルは再び腕をあの剣の姿に変え、スパイルの元まで一瞬にして跳び掛かってきた。

50メートル四方の全てを無茶苦茶にしながら、ティアルはしつこくスパイルを追ってくる。

２人の間にあった街並みはその一瞬であっという間に瓦礫の山へと生まれ変わり、スパイルはひたすらに後ろへ後ろへと下がっていった。

下がっていくしかなかった。

もう分からないのだ。

どうしたらいいのか答えが見つからない。

ティアルは自分の半径50メートル以内を全て無茶苦茶にしながら、いつまでもあの超人的な速度で追ってくる。

何度ダメージを与えようと、何千度必殺技を叩き込もうと、相も変わらず何も変わらず、ずっとずっと追い続けてくる。

ずっとずっとずっと、

追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追って追いかけてくる。

ーー無理だと思った。

流石にもう無理だと、そう思ってしまった。

スパイルの体力は既に限界だし、炎が使える上限もとっくの昔に迫っている。

せめてティアルにも同じだけのダメージがあれば良かったのだが、そうでない以上、仕方がない。

建物の崩れ去る音が国中に響き渡る中、スパイルは歯噛みする。

引き際だーー。

「畜生ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！」

悔しさに思わず叫ぶ。

スパイルは瞬時に体制を整えると、後ろに向かって走った。

悔しさは増すばかりだが、ここまできたら仕方がない。

撤退だ。

逃げるしかない。

だが、

その瞬間に背後から凄まじい殺気の塊が追ってきているのを感じた。

「逃ィィイイイイイイイイイがすかァァアアアアアアアアアアアアアア！！」

追ってきているのは勿論ティアルだ。

ティアルは我を忘れているのか、鬼の形相でスパイルの方向に跳んで来ている。

スパイルは敢えて一つの民家の中に入ると、その中を通って走っていった。

ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！！

背後に破壊の音が響いている。

ティアルが再びあの剣を下に叩き付け、その衝撃で弾け飛んだのだ。

スパイルはその衝撃波を背中から浴びつつ、転びそうになりながらも、とりあえず走り続けた。

民家と民家の間を通って、民家の中に身を隠しつつも、スパイルは走る足を止めない。

止めた時に待つのは死だ。

一瞬の思考すらままならず、ティアルの怒りのままに体を消滅させられるだろう。

だから、

逃げるしかない。

どこまでもどこまでもーー。

ティアルが自分を見失うまで。

「スパァァアアアアアアアアアイルッッッ！！」

声が大きくなった。

距離が近くなった証拠だ。

居場所を悟られたのだろうか？

民家の中を通っているから目には映っていないはずだが、野生の勘で追ってきているのだろう。

ティアルは生まれながらの強烈な戦闘センスで、ありとあらゆる不可能を可能にする。

スパイルは走りながら、思わず後ろを振り返った。

ティアルの姿は見えない。

でも気配は感じる。

あの存在感は間違いない。

すると、

またしても衝撃波が背中を襲った。