第83話
花音は、何とも言えない嫌な気持ちで、吉原の後ろ姿を見つめていた。親密な女性がいるのに、他の女性とホテルに行ったり、花音を誘ったり……。
(怖い人だわ)
花音は一つため息をつくと、気を取り直して課長にコーヒーを持って行った。人の良さそうな顔で笑ってくれた。
「有り難う。いつもおいしいコーヒーを淹れてくれて、ほんとに伊藤さんは、コーヒーを淹れるのが上手だね」
「有り難うございます」
課長の言葉が嬉しくて、花音もニコっと笑うと自分の机に戻った。
仕事が一段落して周りを見ると、課長と吉原が出先から戻ってきた。吉原が花音を意味ありげに見て、自分の席に戻っていく。
「課長、お疲れ様です」
「ああ、有り難う」
「あ、伊藤さん。ちょっと話があるんだが、聞いてくれるかな?」
「はい」
「君、お付き合いしてる人いるかね」
「いえ……?」
「いやね、吉原君が、君と結婚前提で付き合いたいと言ってきてね。伊藤さんは真面目だし、どう切り出して良いのか、分からないと言うんだよ。それでわしに仲に入って欲しいと言って来たんだよ。吉原君は仕事も出来るし、人当たりも良い、どうだろう、一度付き合ってみては……」
花音はその言葉に固まった
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