第五発 獣害

第二二匹 発見

 俺とヘカテリーナはいつも狩りをしている方向とは逆を散歩がてら歩いていく。


振り向けば、古屋敷少し離れた場にあって、目の前には丘陵で大きなな麦畑の景色が広がる。


「いつも、反対側の森林ばかりで狩りをしていたが、ここら辺は耕作地帯だったのか。こりゃ、綺麗な景色だ」


「そうですね、アキトさん」


遠くの畑では農村の人々が麦の収穫に従事している。


俺はそういう景色が好きだ。なんだか人々が丹精作り上げた風景みたいで、心が豊かになっていく。


 そうして、金色に輝く秋の草原を眺めながら歩いていると、


「アキトさん、向こうの黒い生き物がゴソゴソしているんですが、あれは何ですか? 」


ヘカテリーナが指差す。俺はその方向をスキル「望遠鏡」でその黒茶色の生物をぼんやりとだが、確認する。


まぁ、大方あの生き物だろうという予想はつくが・・・。


「ヘカテリーナ、そいつの鳴き声は聞こえるか? 」


「はい、微かですがブーブー? みたいな鳴き声が聞こえます」


そいつの特徴をまとめると、黒茶色の毛皮に、家畜のブタのような鳴き声、一心不乱に地面を掘る姿、周りに他の仲間の存在はない。


俺はそれらの情報から、


「ああ、それは多分オスのイノシシだな・・・」


と、そのような結論に行き着く。


「アキトさん、なんでオスだとわかるんですか? 」


ヘカテリーナが不思議そうに俺の顔を見て、質問してくる。


「あれぐらいの大きさのイノシシのオスは、大体は単独で生きているからな。だから、オスだと断定できたんだ」


そう判断した理由を教えると、ヘカテリーナは目を輝かせながら


「さすが、アキトさん」


尊敬の眼差しで俺を見る。その可愛さにグッと来て、俺は思う。


あのイノシシをヘカテリーナに食べさせてやりたい。


なぜなら、この時期のイノシシは冬に向けて脂肪を蓄えている時期なので、なかなかにうまい。だから、食べさせてやりたいのだ。


それはそうと、俺はなぜにこの昼間から出没しているのかと、様々なことを考えながらイノシシに見ながらどう近づくかを思案しだす。


今は村田銃を改造に出していて、遠距離からは何もできない。


今、手元にあるのは改良されらショットガンと、出るとき鍛治屋のスミスの旦那から渡された試作品の弾1発だけだ。


それはなんでも、ショットガン専用の対大型動物用銃弾らしく、名前はスラッグ弾。


この名前からして、俺の親父が遺した設計図から作ったのであろう。


ならば、この1発は外すわけにはいかない。


「さて、それじゃあ山鯨狩りといこうか」


と、俺達はイノシシに近づいていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る