一発目 自遊猟

第二匹 独立記念日

 「ふわぁ~~~、良く寝た~~~」


清々しい朝、俺は熟眠感に満ちた脳を目覚めさせる。いやぁ~~~~気分がいい。最高に気分がいい。自由ってすばらしい、誰にも邪魔をされず、自分の思うがままに生きれるって最高。


さて、今日は記念すべき自由になって初めての狩りの日だ。


もう昨日は、夢で鹿ちゃんいっぱい狩っちゃった。こりゃ、幸先いいよ、最高にいいよ。


そう思いながら、本日の狩りの準備をする。村田銃を背負って、予備の弾を持って、マタギナガサをぶらさげて、いざ出発。


ここらの森は、シカやイノシシ、カモにクマなどの豊かな狩猟生物がいっぱいいる。しかも、この辺の地形は頭の中に入っており、もう完璧よ。もう庭みたいなもんだ。


もう狩りまくって、狩りまくってやるぞ~~~。


そう意気込むのはいいが、まずはこの地に住まう生物の気持ちなりましょう。


今は朝です、最初にすることはなんですか? そう、喉が渇いたと思い水を飲みます。それでは、一番近い水源地の湖に行くぞ。すべての生命の源である水を目指して、それに群がる獲物を狩るために少し湿った森を歩いていく。



∴ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 歩いて20分ほど経った頃、ようやく湖が一望できる丘に辿りつく。


「いやぁ~~~~、雄大な景色だよ、本当に最高だな」


そう言って、俺は自由な心で景色を味わいながら、水辺を見回しながら獲物がいないかと探す。そうすると、遠くの方で何かの群れが動くのを発見する。


「おっ!? 」


よぉーーーく、目を凝らせば、スキル【望遠鏡】が発動して、対象物にズームされる。


居ました、シカです。正確にはノロジカ。ROE DEER。おいしい獲物。


群れの頭数は6匹ほど、オスジカ1匹に対して、メスジカが5匹。小さいハーレムだ。もちろん全員、斃すのだが・・・。


「獲物達も見つかったことだし。それでは、見つからない様に近づいていきますか」


と身を屈め、蛇のように気付かれない様にどんどん近付いていく。


時折、ノロジカの様子を観察する。奴らは、のんきに水を飲みながらくつろいでいる。まぁ、無警戒って・・・、俺のステルス能力が高すぎるからか・・・。


そんなことを考えながら、村田銃の有効射程距離まで近づく。


「さぁ~~て、ノロジカちゃん達、そのまましといてね~~~」


さすれば、村田銃に弾が入っていることを確認し、4~8倍率のスコープを覗きこんで、一番狙いやすいメスジカの頸椎部分に狙いを定める。


深呼吸を数回して、息を止めた。数秒間、銃の揺れはほとんどなくなって、撃つ。


バァァァァァァァァァァァン!! 


銃声が湖に響いたと、同時にメスジカの一頭が首から地面に倒れ込む。その反応に驚いた他の5匹は蜘蛛の子を散らしたように森の奥へと走り去っていく。


「はーーーい、一匹ハント・・・。」


俺は静かにそう呟き、仕留めたメスジカへと近づいていく。


そうして、 ウキウキでメスジカに近づき、遺体を回収すればスキル【回収業者】が遺体を亜空間へと吸引する。その後、身体が少しだけ重くなる。まぁ、鹿をそのまま持ち運ぶよりかは、楽なので大助かりスキルである。


それはそうと、逃げていたノロジカのこの後の行動を予測しよう。先ほどの驚いたシカは、なぜ仲間が倒れたかは理解していない。だが、一応は警戒して移動するはず。よって、そこから導かれる結論は、


「少し離れた場所に移動して、また水を飲みに来るな」


狩人並みの勘がそう告げたので、再び身を屈めて水辺を進んでいく。ついでに、弾もリロードしておく。


 そうして、進んでいっていると


「チュィィィィィィィン、チュィィィィィィ、チュィィィィィィン」


シカ特有の鳴き声が遠くの方から聞こえてくる。この感じだと、先ほどの群れのノロジカが近くに居ることが容易に想像がつく。


さすれば、その音がした方向へと進路を変えて、ゆっくりと足音が立たない様に近づいていく。ここで、焦って走るのは、素人。超一流の俺は、焦らずゆっくりと着実に進んでいく。


そうして、しばらく歩いていけば、


「チュィィィィィィィン、チュィィィィィィ、チュィィィィィィン」


再び、シカの鳴き声がする。先ほどよりも良く聞こえて、自分の選択が間違ってないことを確信し、村田銃を構える。


鳴き声からして、群れは相当近い。スコープを外して、アイアンサイトで狙う方針に変更する。


さて、これならば急に木の陰から出てきても、十分に対応できる。そう言っているそばから、


パキパキ・・・パキパキパキパキ・・・


自分以外の何かが木の枝を折りながら、進む音が至近距離からしてくる。俺はすぐに目を閉じて、敏感に音の方向を感じとる。


「左斜めの方向から」


村田銃を構えながら、木の陰に隠れてその音の主がやってくるのを息を潜めて待つ。


パキパキパキパキ・・・


どんどん足音は大きくなってくる。さすがの俺もこの時は緊張して脈拍が上昇していく。


「さぁ・・・来い・・・。」


茶色のノロジカが唐突に木の陰からゆっくりと歩いてくる。俺は反射的に銃を構える


だが、まだ撃たない。


なぜかって・・・


それは、今、追っている奴らが群れだからだ。その直後、先ほどのノロジカの後ろから、別の個体が出てくる。


俺はすばやく、そいつに照準を合わせて、息を止めて


銃声を響かせる。


バァァァァァァァァァァン!! 


そして、すばやく最初に出てきた個体にも銃弾をぶち込む。


バァァァァァァァァァァァン!! 


そうすれば、木々の奥の方で豪快にバキバキバキと枝が折れる音が響く。察するに、残りの群れが逃げていったのだろう。


静かになれば、近くに群れはいないと感じ弾をリロードしながら、二匹のノロジカに近づく。


一匹は即死だったが、もう一匹はまだ息があった。俺はすばやくそいつの喉元にマタギナガサを突き刺し、止めを刺すのであった。

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