36話 とある配信者の末路とヤベー奴

あ、あー、テッストーテス、テッストーテス。

…………よし、カメラはおっけー。

良かったよかったさっき落としたからどうかと思ったけど。

うし、さんにぃいちっと。

どうもみなさん!!

都市伝説検証系動画配信者ズムユーでーーす!!

今回は、メンバー限定で上げるのでちょこっと違法くさいことをします。

まずは、この話から話しましょう。

先日、私のSNSからこんなダイレクトメールが来ました。

真夜中にテレビが突然ついて、名前と日時が書かれたものがスクロールされるだけの番組が始まったそうです。

ふと、思い至ったのでしょうね。スクロールされた名前をインターネットなんか調べるとどうやら全て亡くなった方だったそうです。

中々ゾッとしますね。

どんな悪趣味なやつが流したのでしょうか…。

しかし、それだけではないんです。どうやら、数日後の人も流されていたそうです。

そして、その名前に僕の名前もあったらしいんですよね。しかも、笑えることに配信者名で笑笑ー。

ね、恐ろしいですなぁ〜。

そんな、番組を放送した局はいったいどこなのか…。

なんと、地方の放送局でした。

そこは………ババっン!ここ新賀にある放送局。

もしかしたら、私がいるところに福岡のリスナーさんの家が近くにあるかもしれませんね。

そして、私は今日この放送局に乗り込もうと考えています。というか、居ます。

番組が流れた時間を教えてもらえました。

時刻は深夜二時。

本来なら、放送局が閉まっている時間です。いたとしても、警備員くらいでしょう。

でも、実際は誰もいませんでした。まぁ、地方だし。そんなこともあるのでしょう。

今は、誰もいない。何故わかるかって?

ふっ、既に侵入した後だからです。

エントランスで撮影をしています。ちなみにここの放送局の監視カメラはほとんどダミーだそうです。だから、リスナーさんが警察に通報するまで私は捕まることはありません。


では、早速一応下見はしておりますので…。

…………ん?

今、足音が…。おかしいな誰もいなかったのに…。

ちょっと、怪しくなったので隠れますね…。

………………。

………。

……………。


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映された映像は突然、撮影者の悲鳴のような叫び声と共に画面は砂嵐となり、最後には真っ黒な画面だけが残った。

公園の端に止められた特殊車両に乗った俺は西園寺と特戦群の面子と画面を囲うように片膝をつけていた。

今まで見ていたのは、例の放送局のエントランスのど真ん中に置かれた撮影カメラに入っていた。最後の動画だった。

撮影者は、動画配信アプリで都市伝説や陰謀論とかでそれなりにフォロワーが多くいる界隈の中では有名な人間だったそうで、こうやって曰く付きの物件で一日過ごしたり幽霊が出た場所でハンモックで寝てみたとか中々過激?なことをしていたらしい。そんな彼はこのカメラが見つかった日から行方をくらませている。

そういえば、皇がこの人の話は面白いとか言っていたのを思い出した。

ライブ配信ではなかった事が幸いだった。もし、そうだったら大変なことになっていたのかもしれない。

「これで、映像は終わりだ。」

「まぁ、これで何かが放送局にいると言う事がわかったな。それにしても、最近の若いのは度胸があるんだか、愚かなんだか…。」

「ふふ、誰もいない深夜にしか現れないってシャイなのね。可愛いわ。」

「シャドウに向かって可愛いとか……姉さんすげぇっす。」

「さて、貴方はどう思うの?リクちゃん?」

ちゃん……?」

何やら、試すように女性隊員が俺に促す。変に高評価受けてる。まぁ、このグループに信頼されたらそれはそれで上手く立ち回れるようになれるしな。

「………今、画面に細い布のようなものが確認できた。音も雑音であてにならないが何かを引っ張っぱる音らしきものもある。」

恐らく、触手系か……いかん、皇に借りたゲームのせいで変な想像をしてしまった。

「確かに、聞こえなくはないわ。と言うことは、足にはより一層気をつけないとね。それにしても、いい子いい子。気づきのいい子は好きよ。」

「あ、あの……頭撫でるのやめてもらっていいですか?」

なんか、恥ずかしい。

「そうだぞ?男子高校生がおばさんに撫でられるのなんて立ちションを好きな子に見られるくらいキツイことだぞ?」

妙に具体的だな。経験者は語るってやつか…。

「あらぁ〜。誰がおばさん?」

「ひぇー、怖〜怖〜。だが、本当にやめてやりな。」

「ちぇ〜。結構、触り心地いいのに〜。」

「はっはは…。」

「まぁ、雑談はここまでにして、作戦と……今回支給された例のものについて話すとしよう。」



薄暗い室内は好きだ。

その室内で淡く照らすランプの火。これは格別、こんなロマンチックな空間で書く小説はきっといいものになるな。

そう私… 勅使川原文香てしがわらふみかにとって最高のコンディションよ!

四方を私の王子様のユニフォーム姿のポスターが四方の壁を占めている。

………私は無言でパソコンのブルーライトに照らされてタイプする。

「…………ふひぃ……。」

時折漏れる声は自分ではどうしようもない。仕方がない、脳に映り出された映像の尊さに私の理性メーターはオバーワークでいつ壊れ出すか…。ほら、熱を時折、放出しないとオーバーヒートしちゃうし…ね?

熱心に、情熱的にタイプする指を止めずに書き尽くす。

しかし、その指も時には止まってしまう。物語を見直して役になりきり台詞を口にする。演じることは恥ずかしいが必要なことだ。両親や近所の人に迷惑をかけないように卵パックで部屋は覆っているから音漏れは心配することはないから思いっきりやれるわ。

『………ふみか……教えてくれ…。どうして、僕に対してそんなに強く当たるんだい……僕は君と敵対したいわけじゃないんだ…。』

『しっ、知らないわよ。その汗だらけの手で私の腕を掴まないで変態ッッ!それに、本当は……あの女の方が……好きなんでしょ!!』

『な、何を言ってるんだい?ぼっ、僕は………………………』

……………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

「違うわ!!湊海はこういう言い回しはしない!!何をしているの勅使川原文香!!

こんなのが書きたいわけじゃない!!

私は、歳の差で身長差があっていつもツンな態度をする私と誰にでも優しくされて調子に乗るイケメン湊海が初めて反抗された態度を取られてときめく。そして、このシーンはついに湊海が私への感情………つまりは恋に気づく瞬間なの……。クソッタレ!何をしているの私の文才!!何を燻っているの!!」

………いや、違うわね。

熱い体を冷やすように2Lの炭酸飲料をがぶ飲みをして落ち着かせる。

「私は、経験不足よ。そう、思い出しなさい。書いてきた道のりは少し私の改竄した思い出なども組み込まれたもの。でも、今書いているところは私の理想の結末よ。ここはオリジナル。

このシチュエーションを…キャラの気持ちになりきるのよ。………早く湊海と会うために一捻りで潰せるシャドウ出現しなさい!!!」

ガタンと椅子を蹴って立ち上がり天へと叫ぶ。

ぐぅぅぅうーー。

「いけない。創作活動に集中しすぎたわ。そういえば金曜日の26時から今まで何も食べてなかった。」

時刻を見ると夜の10時。

コンビニで何か買うか…。






深夜零時。

流石に辺りは、閑散としている。そんな道を車を走らせて例のモノを持った俺達がいた。

前に西園寺が変身した際に持っていたスーツケース…より小さいものを全員が所持してお互いの装備の確認を始める。

西園寺は慣れた手つきで俺の身体中を見て、装備品に不備はないか一つ一つ指で確認する。

「よし。さて、お互い…抜かりなく………状況開始………」

西園寺の一言で空気が一変し、隊員達は放送局へと腰を低くして駆けていった。鋭く、冷たい。

今回の作戦は光の御子に介入されず日本の特殊部隊だけで敵のシャドウを倒すのが目的だ。ただレヴィの話では今回放送局にいるシャドウは湊や椎名が戦っていた人の悪意が暴走した雑魚のシャドウではない。アズラエルとかいうボスの幹部クラスだそうだ。

だが、指摘しようにも出来ない。

「おい、坊主。遅れるなよ。」

「わかってますよ。」

遅れて、彼らの後ろに引っ付くように進む。

玄関口から入るわけには行かない。駐車場の裏口から入るルートから侵入するようだ。

隊員がロックを解除して非常口のドアノブに手をかけようとした時にレヴィからの警告じみた声が響く。

『………魔力の流れを感じるわ。扉を閉めなさい!』

「待って!」

ドアを開こうとした隊員に静止の声を出そうとした瞬間。

ドアから真っ白な閃光が視界を覆った。


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