第105話
闇の五大精霊さんがどこにいるのかは知らないが、そこまでは闇の五大精霊さんが魔法で呼び寄せてくれるらしく、私達はひとまとまりに固まってその時を待った。冬菜が了承したくらいなのだから、エラを連れて行けるくらいには、そこは安全なところなのだろう。けれど、どこに連れて行かれるのかわからない以上、どうしても不安は消えなかった。当然だろう。少なくとも、問題があるとわかっているところに行くのだから。
足元に魔力でできた魔法陣がひかれる。魔力感知でしかわからないそれは、普通の人には見えることはないだろう。
「あっ、イーサン様には……」
やばっ。イーサン様に何も言わずに国を出て行くところだった。私は慌ててフゥに声をかけると、フゥは笑って頷いた。
「伝えておくよ」
フゥと木の精霊さんに向かって手を振る。冬菜もエラもゼラ達も、2人に向かって手を振っていた。なんだか微笑ましいような気がして、笑ってしまう。
「じゃあねー」
エラは元気に手振っている。その後ろで、ゼラ達3人が寂しそうに木の精霊さんを見つめていた。
瞬きをするほどの間もなかったのではないかと思うほど一瞬で、私達は知らない土地にいた。どうやらここは家の中のようで、目の前には腰まである紫がかった黒髪を持つ、綺麗な女の人がいた。
同じ黒髪なのに、マリア様とは全く髪の雰囲気が違う。マリア様とは比べて大人びて見えるその顔も、態度もその原因の一つなのだろう。
「久しぶりね」
冬菜が少し懐かしそうに笑う。この女性は、冬菜のこの世界での友人なのだろう。と、いうことは。
「久しぶり、トウナ。それと、はじめまして。来てくれてありがとう、皆さん」
この人が、闇の五大精霊なのか。
見た目はそこまで老けて見えるわけでもないのに、落ち着いている、冷静な人に見えれば、まるで人を惑わせる何かのようにも見える。精霊だからこそのものなのであろうそれに、私はまるで魅了されるように一目惚れしてしまった。彼女と友人になれないだろうか。教われることが沢山ありそうだ。そんな期待が膨らんでいく。
「さ、座って」
ここは彼女の家なのだろうか。物の位置などもよくわかっているようで、お茶を入れるといって、その人は部屋から出て行ってしまった。
「ここはどこなのかしら……」
私たちを呼び寄せてくれた人がいなくなって一気に不安になってしまった私は、正面に座る冬菜に話しかけた。
「そうね、魔国のような気がするわ。魔力反応が大きいでしょう」
冬菜に言われて魔力探知を張り巡らせると、たしかに大きな反応がほとんどだ。魔国にいる魔族は魔力の多いものがほとんどだと聞く。
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