第54話

 どうすればいいのか。そんな答え、すぐには出てこない。前世の知識をフル活用しても、状況が少し違うためか、よくわからなかった。

 沈黙の時間が続く。誰も答えを見つけられない。みんなで話し合いながら、少しでも答えに近づかなければ。きっと、そっちの方が答えに近づける気がする。

 答えはきっと、一つではない。けれど私達は、そのたくさんある答えの中からできるだけ、最善のものを見つけ出さなくてはならない。それなのに、一人一人黙って考えていては、効率が悪いだろう。

「何か少しでも思いついたことはない」

 焦っているのか、訴えるように話しかけてしまう。ゆっくり落ち着いて話すなんて、出来なかった。

「魔法で対処し続けるのは良くないわ。水の汚染は進んでいくだろうし、精霊達もそこにばかり力を入れていくことはできないもの」

 たしかにその通りだ。このまま水の五大精霊をここに留めておくわけにもいかないし、かといって、五大精霊以外がこれに対処しようとすれば、魔力切れを起こしてしまうだろう。他に何か解決策を考えなくてはならないと言うことなのだが。

「ずっと守っていくには、やっぱり法律とかで定めるのがいいんじゃないかな」

 エラがおどおどしながら手をあげる。法律なんて難しいことをどこで覚えてきたのだろうか。冬菜が自慢げにしているのを見るあたり、冬菜が教えたのだろうけれど。

「でも、私たち精霊が表立って出るわけにはいかないし……。どうやって、誰にお願いして法律を作ってもらうの」

 ランは首を小さく傾げている。ランの言う通りだ。精霊は基本表に出ない。基本的には誰にも見えないし、見えるようにしている今が特例なのだろう。

 精霊が表に出ないのはおそらく、力を悪用しようとする人たちから身を守るため。精霊は何もかもが特殊すぎる。力もあれば、基本的に死ぬこともない。そんな精霊達が狙われるのは当然のことだ。だから、姿を表さない。

 そんな精霊が世界にでて、国に法を作らせる、というのはあまりにもデメリットが大きすぎるだろう。

「……そうか。ようするに、精霊として、じゃなかったらいいんだね」

考え込んでいた私たちの間に、割って入るように声を発したのは、ニヤリと怪しげに笑う水の五大精霊、彼だった。

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