第49話
私達は驚いて目を見開いた。お城に、水の五大精霊がいる……。一体、どうして。
少し冷静になって考えなければ。私は落ち着きを取り戻そうと、深く息を吸い込んだ。
精霊が城にいること自体は、おかしな話ではないのだ。精霊は、人間に擬態していない限り普通の人間には見えない。今のゼラ達はその状態だ。それなら、どこにいても不思議ではない。誰にも見えず、気づかれないのだから。
けれど、気になることもある。どうしてお城に行く必要があったのか。何か理由はあるのだろうが。五大精霊達はそれぞれの問題に立ち向かうために、バラバラになっていると聞いている。とういことは、城で何か問題があったと言うことなのだろうが……。
「かなり力が弱くなってる……。行きましょう」
お城で力を、魔力を多く使う何かをしていると言うこと言うことなのだろうか。精霊達は少し焦ったように、スピードを上げて、また進み始める。私とエラもみんなに置いていかれないよう、それに倣った。
人魚国で何か問題があったとは、私達は聞いていない。私が貴族だった頃も、冬菜やエラ、ゼラとあの家で過ごしていた頃も、何も伝わってこなかった。町を歩いていても、国民は普通に幸せそうだ。一体どんな問題があると言うのだろうか。城で起こる問題ならば、もっと大ごとになっていてもおかしくはないのに。
「ここからは姿を消せる魔法をかけるわ。体に触れることはできるままだから、誰かにぶつからないように気をつけて」
冬菜が私とエラの肩にポンっと触れる。何かが変わった感じはしないが、通りすがる人の誰とも目が合わなくなった。それは冬菜も精霊の姿に戻っているからなのだろうが、冬菜の姿はあまり変わったように見えない。人間に見せかけるときに、たいして見た目を変えなかったのだろう。冬菜らしいやり方だ。
不安げな顔をする小さな精霊達の後ろから、足を急かして歩く。エラはだんだんと息が切れてきて、しんどそうだ。魔力を使って体力を増強してはいるのだが、病み上がりのエラはあまり体力がない。体を動かすことも今まであまりなかったからか、よく足も絡まっている。このまま急ぐのは少し危険かもしれない。
「エラがしんどそうだから、後から行ってもいいかしら」
私が小声で冬菜に声をかけると、冬菜はぴたりと足を止めてエラのほおに触れた。エラは落ち着かない息で冬菜を見上げている。
「ごめんね、エラ。ゆっくり行きましょう」
冬菜は優しく笑ったが、やっぱり頬はひきつっていた。
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