第44話

 3人は声を合わせるように、アイコンタクトを取り、ニコッと笑った。

「クロエちゃんはね」

「ユキナちゃんって言うらしいから」

「スノーだよ」

 まるで役割分担まで決めていたかのように、3人はぴったり揃えてそう言うと、私の方を見た。よっぽど仲がいいのか、3人固まって私の周りをぐるぐる飛んでいる。

「スノーは、雪のように綺麗」

 おそらく、私の前世の名前と、今世の見た目から取ったのだろう。今の私は肌もそんなに白くないが、今世の私は何せ白い。チークを塗らなければ、顔色が悪く見えるくらいだ。

 綺麗、綺麗と他の2人も笑う。なんだか恥ずかしくなってきた私は、そうかな、と言いながら髪の毛をくるくると指に巻いた。今世の私は、髪も金の混ざった白に近く、綺麗ではあるかもしれない。

「ありがとう」

 私が笑うと、3人も、冬菜も、エラも笑った。

「今度は私がつけるね」

 ここはやっぱり、一番お世話になっている火の精霊さんからだろうか。私が赤い精霊さんに向き直ると、彼女もそれに気がつき、私の目の前で止まると、私の方をまっすぐと見上げた。

 なんと名付けるかは、もう決めている。3人は自然から生まれた精霊だから、花言葉からつけると決めたのだ。

「ゼラニウムからとって、ゼラというのはどうかしら。赤いゼラニウムの花言葉は、君がいて幸せ、なの」

 最近常々感じていたことだ。仲間に恵まれて、なんで幸せなのだろう、と。今世の貴族だった私は、そういったものにあまり恵まれなかった。だからこそわかるのだ。私は今、幸せだと。

「ゼラ。うん、ゼラね。いいわ。嬉しい」

 ゼラは嬉しそうに地面に舞い降りると、ジャンプした。喜んでもらえると言うのは、嬉しいことだ。

 さて、次は水の精霊の番だろうか。私の正面に出てきて、地面に腰掛ける。早く早くと言わんばかりに、彼女は私に期待の眼差しを向けていた。

「デルフィニウムからとって、フィー。あなたは幸福を振り撒くと言った花言葉もあるの」

 つづけて、風の精霊に少し顔を近づける。

「あなたは、コチョウランから、ラン。コチョウラン全体の花言葉は、幸福が飛んでくる、よ」

 2人は嬉しそうに手を取り合って笑っている。こんなにはしゃいでいる3人の姿は、初めて見た。特に、ランは踊ってしまいそうなほど浮かれている。こんな3人、見たことない。新しい姿が見られて、私もなんだか嬉しくなってしまう。

「3人とも、幸福の花言葉なのね」

 エラがそう言うと、冬菜はよく気が付いたねと言いたいのか、エラの頭を撫でていた。

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