第17話
中に入った瞬間、たくさんの赤い何かが視界の中に飛び込んできた。精霊が大量にいるのかと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。
燃えているのだ。連なったたくさんの赤が静かに燃え盛り、道を作っている。その火でできた道は長く続いていて、ここからでは終わりが見えない。ただ、不思議とそれは熱くなくて、私は平然としていた。
「面白い空間でしょう」
火の精霊がコロコロと笑って私を見る。楽しそうに笑う火の精霊に、私は頷いた。
好奇心に支配された私は、キョロキョロとその謎の空間の中を見渡した。本当に不思議だ。この火はいったいなんなのだろうか。試しに手を近づけてみるのだが、やはり熱くはない。空気の温度もちょうど良くて、暖かいくらいで暑くはない。
火の精霊の後に続いて、火で出来た道を進む。なぜだかはよくわからないが、他に精霊はいないようだ。
「みんな、怯えちゃって出てこないわね」
精霊のその一言に、ハッとさせられる。私のせいなんだ。怖い人かもしれない。そう思われているのに住処に突っ込んでいくなんて、可哀想なことをしたものだ。けれど、ここまできたのなら、ただ怖がらせて帰るわけにはいかない。ちゃんと安全な人間だと認定してもらって、少しでも安心してもらわないと。
しばらく進んでいくと、レンガのようなものでできた家が並び始めた。それは私の腕くらいに小さなものもあれば、私が入れるくらい大きなものもある。
「私達火の精霊の家よ。あ、ほら、ここは私の家」
火の精霊がそう言って指さしたのは私の腰くらいまである2階建ての家だ。レンガもその分小さくて、まるでドールハウスのようで可愛らしい。
家は何軒も続いていて、それは奥に進むにつれてだんだん大きくなっているように感じられる。
「あったわ、ここがあの人の家よ」
火の精霊が突然止まり、大きな家を指さした。奥にもまだ大きな家があるようだが、五大精霊の家だろうか。
火の精霊が期待するような目で私を見ている。今更怖いなどと言っていられない。もちろん怖いのだが、ここまできて、協力してもらってやっぱり怖いなどと言い出せない。大丈夫、大丈夫。彼女の選んだ精霊さんなら、きっと大丈夫よ。
私は勇気を一握り握りしめて扉に手を近づける。コンコンコン。3回ノックをすると、中からすぐに返事が返ってきた。
「はあい、今行きまーす」
その返事は、火のように明るい女の人の声だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます