第127話 王国との定期戦③

 居酒屋で、懇親会が開かれた。


 オレ(トーマ)のところには、横にジョンを置き、王子同士の親睦を図るつもりだった。


 が、ジョンに酒を飲ませると、すぐに寝てしまった。


 たったの駆け付け5杯でダウンするとは、どうしようもないヤツ。


 始まって、たったの5分で寝るとは、コイツ、とことん使えねーって思っていると、カッテルがやって来た。


「お前は、飲めるクチだろ?」


「もちろんです、頂きます!」


「お前、マッケンナ君と同じで、イケメンだな!モテるだろ?」


「いえ、そんなことは、あります!」


「そうか、ドンドン飲め!オレと勝負だ!」


 コイツも、5分後に寝てしまった。


 睡眠薬とか、入れてねーぞ!


 コップ酒対決で10杯飲んだだけなのに、この有様だ。


 マッケンナ君のほうが強かったぜ。


 一年前、オレはひょんなことで、マッケンナ君に再会し、その時、一緒に飲んだから知ってるが、カッテルはクズだぜ?


 まあ、その話は、マッケンナ君の許しが出れば、することもあるかもしれないが・・。


「あの~~、私が癒してさしあげましょうか?このお二人?」


「サヤカ、君は優しいね。でも、居酒屋に来て、キュアとか使って、酔いを醒ますなんてもったいない事は、絶対やってはいけない事なんだ。だから、彼らも好きで寝てるんだから、そっとしといてやってくれ」


「そういうものなんですね」


「しかし、あそこ、盛り上がってるな」


 あそこには、アーネとジェイとリッターとリッツと元聖女の娘3人が居た。


 因みに、セーラとフローラはダンスをしていた、なぜかは知らない。


「みなさん、仲良くなれたら良いですね」


「うん?ああ、そうだな」


「アーネさんのとこに、行かないんですか?」


「うん?ああ、またこっちに来るから、今はいいんじゃない」


「あの・・・ありがとうございました」


「うん?なんのこと?」


「その、ジョンのことです。私たちのために、気を使ってもらって」


「うん?ばれた?」


「うふふふ、やはり、やさしいんですね、トーマは」


「いや、アイツがあんまりバカだから、ちょっと言ってやっただけだよ」


「うふふふふ、でも、あの髪型はトーマがやったんでしょ。見てたもん」


「えっ、見てたの?なんで?」


「さあ?何でだったんでしょう?」


 ああそうか、コイツ、聖女だったか・・。


 やはり、特に、癒しの聖女は特別に勇者とのつながりが強いみたいだな。


『サヤカ、オレは、勇者なんだ。そして、お前は聖女だ。そういう事なんだろ?』


「えっ!どうして・・・」


『念話で頼む。知られたくないから。シンシア、フォローしろ!』


『そうですね。仕方ないですね。勇者なら、そこは照れなくても良いのですよ、まったく(あのお方と同じね)』


『シンシア、あなた、何故もっと早く教えてくれないの?』


『早く知ったところで、どうという事もないでしょう?今の所、魔王の報告はないのですから。それと、今回の勇者は、少し特殊だということです』


『どういう事なの?』


『・・トーマ?言うわよ』


『ああ、好きにしろ』


『このトーマは、前回死んだ勇者の生まれ変わりで、しかも、そのまま勇者の魂を宿していて勇者として成人の儀を経ずに覚醒した希有な勇者なの。だから、聖女も成人の儀を経ずに覚醒する者が居ても不思議ではなかったの。あなたの場合、私と勇者があなたに出会った事で、覚醒したようね』


『そんなことが・・・そうだったんですね。なんか、ごめんなさい、この前は。では、教会での仮面のかたは、トーマなの?』


『そうだ。悪かったな、今まで黙ってて』


『では、王国まではどうして?』


『転移したのさ。勇者ならできるようになるんだよ』

 ホントは、ちょっと違うけど。


『そうなんですか。それだと・・これからは、ずっと会えますね』

(・・何を言ってるの、わたし・・・やばい)


 サヤカは、顔を真っ赤にさせてしまった。


「酔ってるのか?」


「そうかも、うふふふふ」

(ごまかせた?)


「ごめん、ちょっと、トイレに行ってくるよ」


 ここで、オレはトイレへと席を外した。


『どうした?ルナ?』


『お取込みみたいでしたが、よろしいですか?』


『ああ、今は大丈夫だ』


『その、ギルと連絡が取れないんですが、トーマ様の方は、なにかご存じですか?』


『うん?いや、知らないな。ちょっと、待ってろ!』


『クモと繋がらないな・・・ちょっと、クモを出して探してみるよ』


『何か、胸騒ぎがします。何もなければいいのですが・・』


『わかったら、連絡するよ』


『私、魔族領に行ってみますね。ギルは、今、魔族領にいるんでしょ?』


『ああ、戦争の準備だとの報告を受けている。だから、あいつ、無茶な事をしたのかもしれない』


『だったら、余計に急がないと』


『ああ、オレの完全覚醒を待っている暇はもう無いかもな。それと、やはり戦争は魔族達が真っ先に駆り出されて、良いように使われるようだぞ。だから、ミーシャを止めないとダメなんだが』


『ついに、その時が来ましたか』


『今、魔族領にいるので、好機だしな』


『とにかく、まだ早まるなよ!』


『はい、それでは』


 こうして、事態はオレを待っててくれない事がわかった。


 でも、ミーシャを救えるのか、今のオレで?


 でも、覚悟を決めるしかないと思って、部屋に戻った。


 すると、アーネ・リッター・セーラvsフィーナ・アヤメ・カッテル、ジェイvsシェリーという感じで、険悪なムードで言い争っていた。


 カッテルは、もう回復してたのか?


 と、そんな事を一瞬考えたが、サヤカが寝ているフローラに回復魔法を使っていた。


 いったい、何があった?


 リッツ「おい、トーマ、ヤバいぞ」


「なんだ?何があった?」


 リッツ「それが、王国のヤローがフローラを」


 サヤカ「ごめんなさい、トーマ。私がしっかりしてなかったから」


「で、何があった?」


 リッツ「フローラが急に、カッテルとイチャイチャし出したんだよ」


 うん?なんだそれ?


 それで何で倒れてんだ?








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