第101話 VSサヤカ
前夜祭で、フランツ王国の第一王女、サヤカに会った。
「フランツ王国第一王女、サヤカと言います。よろしくお願いします」
「ガーランド帝国第一王子、トーマと言います。よろしく」
サヤカは、金髪碧眼の美少女だが、面差しが何処か、儚げで、大人しそうだ。
でも、笑うと、周りを明るくさせるような笑顔を見せる。
髪の毛はセミロングで、細身でスラっとした体形に似合っていて、とても綺麗だ。
そして、近くにいると、フワッと良い香りがする。
どこかで嗅いだことがあるような、懐かしいような、落ち着く匂いだ。
たぶん、前世で嗅いだことがある匂いなのだろう。
「あの、お怪我されているお顔をマスクとかで隠さないのですか?あっ、すいません、急に不躾なことを」
(あれ?私、何てことを。でも、お顔を治してあげたいわ)
「・・・いえ、別に構わないですよ。この醜い顔がオレのトレードマーク?ですので」
この人、意外とハッキリと言うな。見た目、大人しそうなんだけど。ああ、あれか、あのマリーさんの子だから、ある意味、天然かもな。そして、第一王女で甘やかされて育ってるだろうし、たぶん、怖いモノなしの我が儘な姫に違いないや。でも、この子、魔力のオーラの色が・・・そうだな、こんな色してるのは、アーネとか、ソフィーとか・・・いや、そうだ、昔の頃のサーヤに近い・・・良い子なのかな?
「うふふふふ、トーマ様って、意外と面白い方なんですね。そういうふうに茶化して自分の事を言える人って、優しい人なんですよ。最初、ちょっと、気難しい
えっ?オレ、面白いの?
それに、トレードマークって意味がわかるの?
何この人?
ひょっとして、特殊能力保持者?
いや、もしかして、サーヤのように天才かも。
優しいとか、初対面で初めて言われたぞ、たぶん。
でも、ピエールの子だろ?
どうなんだ?
「あはははは、面白い事を言うのは得意だよ。でも、ぼくと一緒で、君、あまり
「その通りです。わたし、お友達が殆んどいないから。それに、大人の人もあまり知らない人ばかりで。それと、わたし、こんな公の場に出るのは初めてで」
「えっ?そうなの?ぼくなんか、第一王子ってことで、面倒な式典とか舞踏会とかに出なくちゃいけなくて。でも、最近は、病気がちなんで、殆ど断っているけどね」
「えっ?でも、トーマ様はとても健康そうですけど」
「いや、オレは呪われててね。この傷が治らないのもそのせいだって言われて。もう、生まれた時から、呪われてるから、ぼくも友達なんか居ないよ。あっ、でも婚約者がいるけどね」
「それは、ステキですね。わたしなんか、だれも・・・」
「あっ!なんか、ごめん。別に、そんなにラブラブ?じゃないから」
「別に、いいですよ。惚気られても。慣れてますから」
「えっ?惚気られてるの、誰かに?まさか、ソフィーじゃないだろう?(し、しまった!)」
「えっ、私の育ての親をご存じなんですか?」
「ああ、あははははは(考えろ、思考加速しろ、超速思考しろ・・・)、まあ(出来ねーじゃん、なんでだよ!)、ああ、あれだよ、彼女は元聖女で、あの魔王を倒した勇者パーティーの一人だろ。有名だし、常識だろ」
「そ、そうなんですね。でも、ソフィアって言うんですけど、ソフィーと呼ぶ人はあまり居ませんが、どうしてトーマ様が?」
この子、なんか、鋭いぞ。
マリーの子なら、そこはスルーしてほしいよな。
やはりピエールの子か?
ってか、この子、意外と怖いキャラかも。
大人しく見えて、影で。
ピエール要素が遺伝でめっちゃあったらどうする?
オーラにそれを悟らせないのも、ピエールを進化させた怪物かも。
しかも、友達が無いとか、初めて公の場に来たとか、普通、第1王女だったらあり得ないだろ?
あれっ?
こんな時には、超速思考が使える?
あ、いや、単なる思考加速かな?
このスキルは、なんとかしてモノにせねば。
えっと、なんだっけ?
ああ、ソフィーね。
「それは、アレだよ。ぼくが、ソフィアって覚えるのが苦手だったからだよ。ソフィーなら、子供でも言いやすいでしょ。それに、フランツ王国の有名貴族の名前とか、最初のお勉強の頃に覚えさせられるよね(ホントに習ったかなんて知らないけど)。君の場合は、我々ガートランド帝国の貴族の名前とかでしょ(これでごまかされるのか?さあ、どうだ、ピエールの娘)?」
「えっ、そうでしたね。デュフォー家とか、ユグノー家(セーラの実家)とかですか?わたしは、ちょっと事情がありまして、そういう基礎知識が足りません。ですから、教えてくださいね」
(さっきは、元聖女だったから、で今度は習ったから?この人、言ってることがチグハグなのがわかってないのですか?ひょっとして、おバカ王子なのでしょうか?それとも、何か隠してる?ちょっと、探ってみましょうか、うふふふ。でも、わたしも他人の事は言えませんよね。幼い時に虐められたなんて言えませんから)
こうして、腹の探り合いが展開され始めた。
まだまだ、夜の
二人の会話は続くのだった。
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