第81話 王国と帝国と

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 フランツ王国にて。

 王国の宰相、シモンは考える。


 帝国には貸しを作っているから、オモテだっての反抗はしておらぬが、もっと、貸しを作っておきたいものよ。

 とりあえず、また、婚姻関係を結びたいところだが、あの閣下では・・・。


 しかし、元聖女達の、王国軍への貢献は、流石だ。

 彼女たちには、もう、閣下の魅了のスキルは働いていないのは承知のところ、それに彼女たちを「支配」することも難しい。

 だが、あ奴等には子供がいる限り、この王国の為、いや、閣下の為、いやいや、このシモンの為に、皆良く働いてくれることは、大きな嬉しい誤算だったわ!


 ぐはははははは!


 一応、ワシの娘であるマリーの処遇が悩ましかったが、あ奴等が排除してくれて、やりやすくなったぞ。これで、閣下も簡単に・・・・・。


 ぐはははははは!


 アヤカに頼んだゴーレム製造も、もう目途が立ってきた。

 多くの兵士が死に、以前の状態に数が戻るのは、とても難しい。

 そのための、ゴーレム製造なのだが、とにかく量産化を急ぎたい。


 本当は、トカラ連合国での戦争後から立て直しに20年かかると言われたが、10年で態勢を整えられるぞ!

 あの戦争さえなければ、もっと早くに・・・全てはあの閣下・・・・。

 しかし、この有能なシモン様が見事立て直してやったわ!


 もう少しだ、もう少しで・・・・くくくくくく。


 エリーには、騎士団員の育成強化を頼んだが、まあ、コイツはバカだから、よくわからんが、腕だけは王国一。今や、俊英たちが研鑽に励んで、超精鋭部隊が出来つつある。


 ソフィーには教会関係者を束ねてもらい、聖女の力を失っているとはいえ、若手中心にヒーラーの育成と結界魔術の研鑽をさせているところだ。

 それに、成人の儀を一手に引き受けているため、今までとはちょっと違い、ちょっと強制力をかけるだけで、毎年優秀な人材が一定数以上は確保出来るというモノだ。


 教会関係では、あの者が、裏組織を展開しておる。

 帝国の暗部にも、スパイを入れておるが、使い物にならなくなるヤツが多く出るなど、あそこだけが難攻不落だが、まあ、帝国暗部よりこっちの方が組織的には大きいから、そろそろ、暗部を潰してしまう絵図を作らねばな。


 ぐははははははは!


 そして、ミーシャには、魔族部隊の再編と強化に尽力させている。

 ミーシャだけは定期的に、閣下が声掛けをなされ、いまでは第一王妃のようだ。

 その部下は支配の影響下で歯向かう者は、今では少ない。

 まあ、魔王が居ないので魔族は一枚岩ではないようだから、何かと面倒だが、ミーシャが魅了されておれば問題無い。


 すべては、ワシのため。

 そして、ワシのあるじ御為おんためであ~~~る!!!!


 今日も、美しい後家を・・・ぐはははは・・・後家にしてしまったあの女でも抱くとするかの~~~~~・・・・ぐはははははは!!



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 ガーランド帝国にて。

 皇帝ルドルフ14世視点。


 暗部の研究チームは、それなりの成果を出したが、それにかかった人材と時間、それに経費などバカにならんかった。

 一番の失敗は、我が後継者達の死だ!

 娘ばかりで、男は悉く、死ぬ。

 呪われているとかでなく、これも暗部のせいだ!


 あいつ、あのハゲのミューラーめ!

 しかし、あいつが居ないと、暗部は動かん。

 それに、あいつは、宰相や帝国軍総帥、複数の伯爵をも味方につけておる。

 あいつーーーーー!!!


 すまぬな、トーマよ。

 其方の母にも、悪い事をした。

 ミューラーの口車に乗ったワシが愚かじゃった。

 ワシの代でこの国が終わるわけにはイカンのじゃ。

 あの王国の言いなりには、なりとうない。


 トーマ、お前、顔も醜く、魔法も剣技も普通以下という。

 この前など、トイレで倒れていたというではないか。

 さらに病弱を抱えた王子など、どうしたものか・・・。


 トーマ、お前に、この皇帝という重責が務まるのか、ワシは心配じゃ。

 ワシは、もう長くは無い。

 しかし、あの妃なら、アーネなら、良く夫を支えるであろうが。


 ああ~~、ここでワシに何かラッキーな事があれば良いのだが・・。


 そうした、鬱屈とした日々を過ごしていたところ、ミューラーが頭をテカらせ乍ら、謁見してきた。


「皇帝陛下におかれましては、ますますご健勝の事かと、お慶び申し上げます(早よ、死ねや)」


「何か良い話ということだが、聞かせよ(どうせ、禄でもない事であろう?)」


「ははっ!でしたら、お人払いを!」


「良きに計らえ!」

 こうして、ごく少数で、小さな声で話された内容は・・・・。


「どうですか?お気に召しましたか?」

(このエロじじい、顔がニヤケ過ぎで、相変わらずわかりやすい。最近は、あのクスリも多目に入れているからな、くくくくく)


「うむ!まあ、良きに計らえ!」


 こうして、ミューラー男爵は、またしても舌先三寸と皇帝の性向につけ込んで、ご機嫌を取りつつ、自分の意に沿うように皇帝を動かすのだった。


 この日、ミューラーが皇帝に献じたのは、一見、うら若き可憐さと清楚さを併せ持つ印象だが、豊満なムネと吸い付きたくなるような白い肌の妖艶なる一人の美女であった。


 ミューラーは、今までにも数々の女性を献じてきたが、この女性はミューラーの最後の奥の手だった。

 それほどまでに美しく、床上手でもあり、乙女を演じることにも長けた、ミューラーが発掘し育て、愛でた、この女性は、まさに傾国の美女であった。






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