第67話 聖女たちの裏切り②


 アヤカ「ありがとう、トーヤ!」

 ソフィー「やったわね、トーヤ!」

 エリー「さすが、わたし!」

 ト「えっ?・・・・お前たち・・・なんで?・・・がはっ!!」

 それぞれが、オレの腹に剣を突き立てた。

 アヤカとソフィーはレイピア?

 エリーは聖剣で。


 時が止まったように思えた。

 こいつ等、笑顔で、オレを!

 躊躇なく、楽し気に、殺気などなかった。

 まるで、いつも抱き着いてくる時と同じように。

 オレは・・・・ただ、コイツ等の顔を見つめるだけだった。



 ア「あんたが悪いのよ!早く、死ね!」

 エ「これで、どう?」

 エリーによって、聖剣ソーラーレイティアで、身体を何度も突き刺された。

 血が飛び散る。

 笑顔の聖女たちにも、血が飛び散る。

 エリーは、口にかかった血をペロッと舐めて笑っている。

 オレは、シールドの魔法も、オートガードも発動していないことがわかった。


 ア「無駄よ、ムダ、ムダ!アンチマジックを掛けたわ。予め、何重にもね。そして、バインドも掛けてるよ。腐っても、あんた、勇者だからね」


 ソ「よくも、私のロールを殺したわね!やはり、ピエール様の言う通り、クズ勇者だったわ。この国を潰そうとしてたんでしょ。私たち、騙されて、あんたの妻になるとこだったよ!早く死になさい!デバフも掛けてあげたわ。クズらしく、エリーに斬り刻まれなさい!」


 エ「ホントに、クズ!まさか、イカロスお兄様を私の目の前で殺すなんて!イカ臭いけど、私のただ一人のお兄様なのに!」


 ア「トーヤって、こういうヤツだったのよ。ユウトは、大切な初キスのヒトだったの。好きだったわ、他に女を作っても。ジャポニカでは当たり前だし、彼ってモテるから。ちょっとだけ、フライングしただけなのに、殺すなんて、酷い。この世界にコイツを野放しにさせたら、滅茶苦茶になるとこだったわ」


 ソ「そうよ、コイツを殺せるのは私たち聖女しか居ない。今しか、チャンスがなかったわ。これで、世界が救われる。そして、私たちも、ね」


 ト「お前ら、いつから、裏切っていた?」


 ソ「知りたい?えへへへへへ、最初からよ。サーヤをハメて、アンタを信用させて、大人キスとか・・・ぷぷぷぷ・・ホント、バカだよね、アンタ」

 ア「エクストラバインド5重掛け!!くふふふふ、バカは死なないと治らないそうよ」

 ソ「えへへへへへ、治してあげるわ、直ぐに楽になるわよ。良かったわね、優秀な聖女たちで!あはははははは」

 エ「えい!これで、どう!」

 エリーの鋭い剣が迫って来る。


 オレは、集中した。

 超感覚、超速思考、これらはスキルだ。

 魔法じゃねーから、使える・・だけど、それだけか?

 勇者のスキル、まだ上があるはず!

 集中しろ!

 そして、考えろ!

 考えろ、オレ!


 策は無いのか?


 今の現状は・・・オレは、魔法と身体の自由を奪われている。

 木偶の坊の様に、突っ立っているだけだ。


 オレはある事に気づく。

 魔法をコイツ等、使っている。

 この部屋の結界が作動していない!

 だったら、オレの全力の魔力で、お前等の魔力を凌駕するのみ!


 指輪に魔力を込める!


 あれっ?

 手ごたえがない!

 なんで?


 エリーの剣が来る!

 でも、全力で、シールドを張る!


 オレは、右腕を斬り飛ばされた!

 さらに、切り返しが来る!


 魔法は、不発だったけど、もう一度!


 全力で!

 今度こそは!


 ザシュッ!!


 ト「うがぁーーーー!!」

 右わき腹を斬られる。


 エ「きっもちいい!!さあ、トドメよ!」


 オレは、もう一度、超感覚、超速思考をする。

 最後まで、抗う!

 オレは、勇者だ!


 こいつら、聖女の力をさっきから使っていない。

 なぜだ?

 早く死んでほしいのだろ?

 それなら使えば直ぐに・・・こいつ等、使

 エリーはビームを打たないし、アヤカも光の聖剣を撃ってこないし、ソフィーもハゴロモの天羽うもう攻撃がない、そもそもアヤカとソフィーは聖武具を所持していない。


 ってことは、コイツ等、処女を失っている!!

 ピエールか?

 アイツしか、思い当たらねー!

 頬を赤らめてたのは、アイツに対してか!!


 しかし、コイツ等には聖王からもらった指輪が・・指輪をしているハズだ、それがあれば、状態異常の魔法は効かないハズ・・・・だったが・・・代わりにデカい宝石が付いている指輪がハマっている・・これ、どこかで・・・サーヤが付けていた、あの時に・・・これは?


 ルーシー、お前だけは・・お前だけは守ってやる・・守らねーと・・・ルーシー・・・なに?・・・・目の隅に捉えた彼女の顔は笑っていた・・・・・なぜ・・・お前もなのか?・・・あの時、頬を赤らめていたのは、アイツに対して・・・・・・。

 オレは、一瞬、超感覚、超速思考を止めた、止めてしまった。



 直ぐに、エリーの剣が迫り、オレの首を跳ね飛ばした。


 ソ・エ・ア「あはははははははは・・・・・・」


 おまえらーーーーーーーー!!!!

 くそったれ!!!


 オレは、再び、超感覚、超速思考を始める。

 もう、ムリだとわかっているけど、綺麗に斬られたから、痛みをまだ感じていないうちに、痛みで意識を失わないうちに。


 ルーシーは、笑っていた・・・そうか・・あの剣・・実は両刃・・見た目は片刃・・ルーシー・・いつからオマエ・・・・。


 首だけになっていたが、最後のチカラで、周囲を見た。



 シモンは笑っている。

 ピエールも笑っている。

 騎士団長ルーカス、久しぶりだが、お前、この裏切り者が!


 アヤカ、エリー、ソフィー・・・・そして、隅の方に居るのは、ミーシャか?

 えっ?

 ミーシャ、お前もどうして?


 みんな、下卑た顔で、笑っていた。

 オレが死んでいくのが、それ程嬉しいのか!!

 何が英雄だ!

 何が特別待遇だ!

 みんな、笑いをこらえて見てたのか?


 そうか、最初に勲章を有難く貰った時から、みんな心で笑ってたのか・・・・勲章?・・・・この勲章、そうか、そんな仕掛けまで用意してたのか・・・オレはバカだ!!大バカだ!!コイツ等を決して信用してなかったにもかかわらず、ここでこんなことに・・・・。


 ルーシー、女優か?お前の演技力に騙され続けていたぞ!

 あの時も、あのオレを慰めてくれた時も、演技だったのか?

 オレ、信じてた・・・愛してた・・・なのに・・・・クソが!!


 意識が・・・・くそっ!・・・オレ・・・お前らのこと、好きだったんだぞ!!・・・・・この・・・・コノヤ・・・・・。


 最後に見たのは、聖女たち。


 ソフィーは笑いながら・・・・・・涙?を流している?

 アヤカは笑いながら・・・・左コブシを握っている。

 エリーは、左手で左の耳朶みみたぶいじっている。

 アヤカとエリーのこの仕草は、悲しい事に耐えるときの無意識の仕草。

 ソフィーは言わずもがな。

 

 しかし、オレが見たのはここまで。


 オレは、暗い暗い闇の中へ意識を閉ざしたのだった。




 ギチギチギチ・・・いつの間に居たのか、天井で小さな牙を鳴らす魔物が居た。

 その音は、微かで、ここにいる者たちは誰も気がついていない。


 その音は、悲しく、何かを訴えているような、そんな音だった。

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