第63話 再会②

 ダルジは、前からクズだったが、サーヤ、お前もそんなダルジを愛するだけあって、心までクズに成り下がったのか?


 オレ、サーヤの、昔のサーヤのこと、ずっとずっと、好きだった・・・なのに、なんで?・・・どうしちまったんだよ!!


 サ「コイツ、しつこいよね。じゃあさあ、これでどうお?死ねよ、オラ!」

 サーヤは、またしても、オレの股に!!

 ト「うげっ!!あああぁああぁぁぁーーー」

 ダ「やっちゃったか、コレ?」

 サ「うふふふふ、気持ちいいんじゃない、痛くて(笑)」


 オレは、転げ回った。

 コイツ等の歪んだ笑い顔を見ながら・・・・。


 ホントにコイツ等は変わったのかどうか、ちょっと、様子を見てただけだけど、もういい!演技は終わりだ!!

 オレは、口は切れて血が出てるけど、こんなのノーダメージ?だからな!

 ああ、心の方がダメージを受けちまったぜ!


 コイツ等は、正真正銘のクズだ!もうサーヤなんかとは思わねー!

 コイツ等は、世の中の害悪だ!

 コイツ等は、今までにも、こんな事をしてたようだな。

 腐ってるぜ!


 今度は、オマエらが痛い目を見て貰おうか!


 オレは、ダルジの足を掴むと、寝た体勢で投げ飛ばし、直ぐに起き上がった。


 だが、やはり、サーヤから、これも直ぐに横薙ぎの剣撃が来る。

 これは、速い。

 オレがダルジを、飛ばそうと足を掴んで放り投げるモーションに入った時点で剣撃を放とうとしたのだろう。



 だが、剣よりも魔力放出の方が断然速い。

 しかも、予め準備しているのでね。

 オレは、この前から準備していた手刀を振る。


 超速の手刀は、正確には、手の先から伸ばした魔力で作られた剣は、彼女の手首に当たった。

 とはいえ、その威力は斬れるほどの強さではないのだが。


 サーヤの持っていた木刀は、彼女が手放したために、オレの胴を掠めて、横へ飛ぶ。

 彼女の身のこなしは流石で、腕を庇い、手の動きを横へずらし、さらに身体ごと横に転がって、衝撃を緩和させたので、あまりダメージを受けてはいない。


 なんという反射神経か?

 これが剣聖のチカラか?

 いや、これは子供の頃からの訓練の賜物だ。しかし、あの超速の手刀が見えたのか?



 オレは追撃はせずに、話しかけた。


 ト「ザーヤ・・オレだ!トーヤだ!もう、止めろ!」

 サ「トーヤ?・・・えっ?でも、その姿・・・そうなの?」

彼女は、びっくりしたようだ。

その顔は、いつものサーヤの顔?いや、騙されるな、オレ!

コイツは、もう、だ!


 ダルジ「なんだと、トーヤだと!!コイツが?うははははは!!」

 サ「うふふふふふふ。トーヤなのね、じゃあ、殺しちゃってもいいよね」

 ダ「ああ、コイツはこの村の恥さらしだ!最弱勇者だとか、こんな使えねーヤツがなんで勇者だって、アジャ村に文句ばかり言われて、ホントに村中のみんなが迷惑したんだ。なにか買おうとしても、高い値段を付けられたり、売ろうと思っても安くしか買ってもらえなかったり。隣町に多くの者たちが引っ越していった。全部、お前のせいだ!!」


 サ「ああ、ダルジ。村のことをとっても心配して、こんなに頭の髪の毛が薄くなってしまったわ。それも、全部、あんたが悪いのよ、トーヤ!ああ、ダルジ、わたし、禿げて来た頭でも、ダルジが好きよ!愛してるわ!」


 そう言うと、サーヤはダルジに抱き着き、キスをする。


 なにこれ?

 コイツはサーヤじゃねー、こんなのサーヤじゃねー!


 でも、そこまで好きになってるって?


 その時、家から女性が出て来た。

 シオン「あらあら、なんだか騒々しいと思ったら、お客さん?あら、昼間からあなた達、仲がいいわね。ちょっと、お父さん、いらしてくださいな」

 ダルジの父ワルジ「なんだ、なんだ、ひっく!」

 シオン「あの子たち、キスしてたみたいよ、お客さんの前で。ねえ~、私たちもっ!うん、ちゅばちゅばじゅぶべろろん」

 ワルジ「ぷはぁー、ひっく。げへへへ、朝もやったけど、もう一発やろうか、今から」

 シオン「やだーー、あなたったら」


 ト「母さん、どうじたんだ?なぜ、そんなやつと?」

 シ「誰?このヒト?母さんなんて、こんな大きな子ども、知りませんけど」

 サーヤ「トーヤなんですって。ウソかもしれないけど、丁度よかったわ。お母様、コイツ、ちょっと強いの。お母様も、コイツを殺すの手伝って」

 シ「えっ?どういうこと?」


 ダルジ「コイツ、この村の人間を殺して、財産を奪おうとしてるんだ。それにさっき、オレ達を襲って来て殺そうとしたんだ」


 ワルジ「なに?それは、酷いヤツだな!シオン、すぐにソイツを始末してくれ」

 シ「はい、あなた。そんな極悪人、許しておけないわ。ホントのトーヤなら、尚更、私が殺さないと!」

 ワルジ「お前の魔法は最高だ!すぐに倒して、気持ちいい事しようぜ、ぐへへへへ」

 シ「まあ、あなたったら、やらしいのね。そんなあなたが好きよ」


 オレは、何を見て、何を聞いてるんだ?

 サーヤだけでなく、母さんまで・・・

 魔力感知をしても、わからない。


 またしても、考えている暇はなさそうだった。


 シ「バインド!」

 魔力がオレに纏わりつき、拘束しようとする。

 サーヤ「しっ!!」

 同時にサーヤの剣が神速でオレの心臓を狙って突き出された。

 サーヤは母さんがキスしている間に真剣を取ってきていたようだ。

 バカなオレが母さんたちを、あっけに取られて茫然と見ている間に。

 そうか、オレに隙を作るために、わざと・・・・。


 二人は、上手く連携できるようだ。

 そして、この剣と魔法の同時攻撃も、いつもやっているようなやり方で、躊躇なく、そして、自然に行っている。

 二人は、こうして、魔人や魔物と戦ってきたのだろう、この村を守るために。

 まさか、人間相手には、今回が初めてだろう、が・・・?


 今までの、甘く浮ついたムードは、一変して、シビア?なムードになった。

 オレは、いわゆる、絶体絶命ってやつだ!

 どうする、オレ?


 この二人には、オレを殺すことに戸惑いがない。

 だったら、オレも本気で・・・・・・。

 でも、誰かに操られているとしたら・・・。

 でも、それも、オレの感知能力ではわからねー。

 しかし、聖剣のない今のオレでは本気で相手をしないと、ヤバいぞ。


 いったいどうすれば・・・・。


 二人の醜く歪んだ顔を見ながら、オレは、彼女たちに手傷を与えるのを躊躇していた。

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