第32話 エリーナ=ルーチェ②
そして、幾ばくもなく、エリーの婚約者が現れた。
たしかに、変な香水の匂いがする。
イ「どうも、イカロスと言います」
ト「勇者と言います」
エ「エリーと言います」
イ「いつもエリーがお世話になってます」
ト「ええ、いつもお世話をしてます」
エ「私も、いろいろなお世話をしてます」
イ「エリー、例えばどんな世話をしてるんだい?」
エ「この前は、ほっぺにチューをしたよ」
イ「・・・それは・・どういうわけで・・勇者殿?」
ト「オレたちは、そういう関係だってことだ!」
イ「・・・えっ?・・どういうこと・・エリー?」
エ「そういうことです」
ト「そういうことだ。だから、お前との婚約は破棄してもらおう!」
イ「な、なにを・・」
エ「あん、エッチなんだから、勇者様は♡」
オレは、エリーの・・・小さなムネを触る・・・膨らみの感触は、胸当てをしているため?小さすぎるため?、全然わからん。
ト「ははは、あいかわらず、可愛いよ、エリー」
エ「うふふふふ、ホントの事を言ってくれてうれしいわ、またキスしちゃおうっと、ぶちゅー」
ト「ちゅば、ちゅる、ちゅるるん」
あれ?ちょっと・・・・やっちまったけど、大丈夫か?
ト「あっは、いつも激しいな、エリーは」
エ「あはん、だって~~」
イ「貴様ーー!勇者、オレの女を寝取ったな!」
ト「いやだな~、寝取られる方が悪いんだろ!」
イ「きさま~~、許さん!!」
イカロスは怒った!抜刀するや否や、オレの首筋へ斬撃を放った。
が、エリーがそれを受け止め、イカロスの剣を弾き、イカの剣は海へ帰った・・・じゃなくて、天井へ刺さった。
イ「エリー、どうしたんだよ!君は僕を愛してるよね!ずっと、愛し合ってたじゃないか!」
エ「よく言うわね、お兄様!!私は、もう、あなたの言いなりになんかならない!私はあなたのことなんか、前からも、これから先も、ずっと愛することはないわ!」
お兄様だと?どういう関係だ?そういう関係なのか?いいの?
イ「ゆうううしゃゃゃーーーーーー、おまえ、エリーに何をしたーーーー!!魅了のスキルを使ったんだろう!!わかってるんだからなーーーー!!おりゃーーーーーー!!」
イカが掴みかかって来た、くさい。
スンでのところで、回避して、足を引っかけてやった。
イカが床に転がった。
イ「ぢぐじょうーーーーー!!パパに言いつけてやるーーー!!覚えていろよ!勇者ーーーー!!エリーーー、僕が君を救って見せるからね、それまで待っててね!」
エ「私は、勇者様に、もう救ってもらってる。お兄様みたいなイカ臭い人は大嫌いよ。もう、二度と私の前には現れないで!」
ト「いいか、そういうことだ、イカ!それに、お前には、チチのデカい女が二人もいるのだろう?それで満足しろよな、このイカ!」
エ「そうよ、お兄様が先に私を裏切っておいて、よく言うわよ!ホントにいいかげんにしてよね!」
イ「エリーーーーーーー!!」
こうして、二人の婚約は破棄された。
勇者の特権で、破棄できたのだった・・・らしい、そんな特権が・・・だから、歴代勇者たちは寝取れたのか・・・教えてくれよ、そこ、大事なとこでしょ!
ト「エリー・・・これで良かったのか?」
エ「うん、ごめんね、付き合わせちゃって」
ト「ああ、でも、なんかごめん。大人キスになって・・・」
エ「なによ、私じゃダメ?」
ト「えっ?」
エ「あのエミリって子とやってるんでしょ?」
ト「いや、何もしてないって!聖王のじじいに訊いてよ。だいたい、じじいがオレに押し付けてきたんだからね!」
エ「そうなの?信じられないけど、信じるわ。だから、わたし、魔王討伐が終わったら、トーヤに責任を取ってもらうからね!」
そう言って、オレにキスをした。
さすが、剣の聖女!
素早くて、身動きが取れなかった・・・という事にしておこう。
~~~~~エリーの独白
私は、ルーチェ家の養女だ。
生まれた当時は、子爵家の娘で、聖騎士だった父親の遺伝かはわからないが、私にはもともと剣の才能があった。
私も父親と同じ聖騎士になると、その頃から思っていた。
しかし、私が、7歳の時に子爵家の財産が没収された。
父親と母親は自殺。兄弟はいないため、親戚に一人だけ預けられていた。
私は、女であり、剣の才能もあることから、聖騎士団では伝統のある家系のルーチェ家から養女の打診があり、その親戚には多くのお金が支払われたようだ。
私は、養女となり、やがて、ルーチェ家の跡取りとなるイカロスの妻になることが決められた。
別に、そのことには特に何も思わなかった。
よくある貴族のお話である。
しかし、そのイカロスは曲者だった。
事ある度に、お兄様風を吹かしまくり、私は彼に従わなければならなかった。
「どうだ!兄はすごいだろう!!こんなこともできるぞ!よく見ていろ!」
そう言って、逆立ちをして、歩いてきた。
私は、凄いですねと言って、お兄様のお腹をくすぐった。
お兄様は、喜んでくれた。
倒れたけど。
「どうだ!これ!大きくなったぞ!よく見るんだ!」
「やだ、お兄様ったら、そんなイチモツを見せびらかして!」
そう言って、私はその大きくなっている膨らみに針を刺してあげた。
「いった!いやいや、オレのはそんなことでは・・・ああ、止めて」
仕方がないので、膨らませている二の腕の力こぶから針を抜いてあげた。
折角、張り切っていらっしゃったのに、張り合いのない事。
アレって、プシューってヘッコまないのね、勉強になったわ。
そんな日常だったが、唯一、剣だけは私の境遇を忘れさせてくれた。
もしかして、剣が私をどこか、幸せに導いてくれるかもしれないと、懸命に励んだ。
だから、私は剣技を高めるためのあらゆる努力を厭わなかった。
だから、いつの間にか、私の剣術仲間で親友だと思っていた、チチの発達が私よりも早い彼女たちが、お兄様の彼女となっていることに気が付かないまま、時が過ぎていった。
彼女たちの事を知っても、私は笑顔でいた。
そうすることがお兄様との関係に波風が立たない事を知っていたからだ。
私は、あくまでも養女であり、その立場を
成人の儀があり、聖女となって、聖王様に会うまでは。
聖王様は、私のことをお調べになったようで、よくご存じだった。
それで、一つの提案をされた。
「もし、勇者がお主を妻と認めるのなら、婚約は破棄できるであろう」と。
私はそのことを他の誰にもしゃべらないようにと、そして聖王様も誰にも言わない、ここだけの話だと、おっしゃられた。
そうして、謁見の間では、初対面を装い、言葉少なに送り出してくださった。
今、私は、感謝してもしきれないくらいの恩を感じている。
さて、勇者様に初めて会った時、私は、彼で大丈夫なのか、とても心配になった。
あの時、フランツ国王ピエール様に会った時に、勇者様にも会ったのだが、どちらかといえば、いえ、そんなものじゃなくて、ピエール様が素敵すぎて、トーヤのことなど眼中になかったというのが本音だった。
今から思えば不思議なのだが、フランツ王国にいる間は、ピエール様がまるで私の勇者様の様に感じた。
だから、サーヤが勇者トーヤの恋人だと言われても、まあ、がんばれと気軽に応援していた。
私は、聖王様のおっしゃられたことを忘れたわけではないのに・・・でも、妻になるならピエール様か、そのような方しかないと思ってしまった。
だがしかし、サリュートに近づくにつれて、今までのピエール様への気持ちは消えてなくなり、勇者トーヤと仲良く話すことができるようになった。
最初は、まだピエール様のことを引きずっていたため、なぜかトーヤをイジメたくなり、ちょっと悪さをしていたけど、彼は全く私に苦情を言うことなく、むしろ積極的に私の剣技を盗もうと私との剣の修練を欠かさなかった。
私は、そんな一途に強くなろうとしている彼に惹かれていく自分がなぜか微笑ましく、楽しく、彼と剣技を交えることを幸せに感じられるようになった。
そして、アレを私は目撃する。
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