第6話 もっと人を嫌いになれ!
なんというか…現代社会の生きづらさってさ。
とにかく嫌な感情に蓋をするっていうのがあるけど、あれは良くないね。
「たとえば?」
誰かを嫌う、憎むのは良くありませんとか。無理無理。
人間ってさ、もっと自己中でエゴの塊なんだ。嫌いな人だらけでむしろ、好きな人の方が少ないのが当たり前だよ。
「それおじさんだからじゃない?」
そうかなー?人間って多分。
どうでもいい人が8割ぐらいで。
嫌いな人が1.5割で
好きな人が0.5割。
この0.5割がね。自分が損して、かばってもいいかなぁって思う人達。
「ふ~ん…じゃあ、あたしは、どこらへんなの?」
ロリちゃんは、好きと、どうでもいいの間ぐらいね。
「なんでよ!ふつー私はその0.5割に入るでしょ!」
ははは…ロリちゃんのそういう所好きだなぁ。
今日のおやつは、ホットケーキだよ。元気出して!
「おじさんのせいなんだけど…もっ…ふわふわ、おいし」
そりゃーよかった。頑張って作ったからね!
「おじさんの手作りなの!?」
というかね、良い感情ばかり浸かってると、怒りとか憎しみとかの、負の感情に支配されやすいような気がする。
「どういう意味?」
定期的に誰かを嫌いになって、嫌な感情をいろんな人に分散させないとさ…。
初めて人を嫌いになったとき、そういう感情をどう処理していいかわからないし、嫌いな人に対して、どう接したらいいかわからないんだよね。
私みたいなやつはさ、物語を参考にするわけ。
でも、作り物の物語はさ、嫌いな人にも実は良い所もあるんだよって書かれ方してるのが多い。結局主人公はその嫌いになった人のこと、見直して最終的には嫌いにならないってオチが多かったりする。定番の綺麗なストーリーだよね。
私もさ、それを参考にしたよ。実は良い所あるんだろうって見つけようとしたし、相手のことを理解しようとした。
「もっもっ…」
でも、実際はこっちが歩みよっても、向こうは歩みよらない。ずっと、こっちが譲歩して折れるのを待っている。なんというか社会ってそういうことだらけでさぁー。私が読んできたあの世界はつくづく幻想なんだなって思った。
「そうなの?」
うん。そんで、太宰治や夏目漱石、芥川龍之介とかの文豪の人が書いた人間の醜さに触れた時に、こっちがホンモノなんだなぁって。
「ふーん。名作なだけある?」
うん。人間の本質だよね。あんまり綺麗な物語読むのも良くないなって思った。人間は醜いってちゃんとわかっていた方が良い。
醜さの中の美しさの方がずっと良い。悪意に慣れてるとさ、人間の善性に触れたときその尊さに涙が出るもんね。
「だから、この題名にしたの?」
そうー!もっと人を嫌え!憎め!
「おじさんは、心が貧しいなぁって思うよ」
貧しくて、なにが悪いのさ。
「あー…開き直ってる」
きれいごとに疲れてるからね。きれいごとだけじゃあ、世の中まわりません。これホント。
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