閑話 皇女たちの不安 リリノア

 グレイが寮まで送ると申し出てきたが、まだ明るいからとそれを丁重に断り、二人はレストランでデザートをスプーンでつついていた。


「リリーお前、想像以上に面倒な性格をしておるな」

「ほっといてくださいまし」


 不機嫌そうにそっぽを向くリリノアに、オリヴィアは苦笑しつつもアイスを掬ったスプーンを口に入れる。


「いっそのこと放っておけば? わらわたちの最大のライバルが脱落するかもしれないわけだし」

「そんなのダメなの! グレイとサテラは一緒にいなきゃ!」

「そうなのか? 何分、わらわは大してサテラという者を知らぬのでな」

「二人はいつも一緒にいたんです。私から見ても羨ましいくらい仲の良い姉弟だった。それが――」


 言葉に詰まるリリノアにオリヴィアは目を細めると――。


「リリーのその不安は、最近のグレイの距離感からか?」

「う……」


オリヴィアの急所を突く言葉に、顔を強張らせつつも言葉に詰まるリリノア。


「偽らんでもよろしい。妾もずっと気になっていたことじゃしな」

「うん。別に冷たくなったとかではないんですけど……」

「稀にグレイの口から出るこの世界から去ることになった仮定の話じゃろ?」

「……」


 オリヴィアは頷くリリノアの頭をそっと撫でて、


「今のこの幸せ、変わらねば良いな」


 心からの言葉を述べる。


「う……ん」


 遂に俯き大粒の涙を流すリリノアに優しく微笑み、


「そうじゃな。本当にこのまま続くと良いな」


 オリヴィアはもう一度呟いたのだった。


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