第5話 神様!!!!!
(やばい! やばい! やばい!)
手にした箸も茶碗も放り出し家を飛び出した俺は、大慌てでひいばあちゃんの家に向かった。
『神様がいつまで、どれだけ力を貸してくれるかは、神様のお心次第だよ。文句を言っても欲張ってもいけない。神様を大切にする気持ちさえ疎かにしなければ、決して悪いことにはならないからね』
(やばい! 罰が当たった!)
浮かれきっていた俺は、大切にするどころか二度もひいばあちゃん家の掃除をさぼっていた。当然、お社にも手を合わせていなかった。それなのに母さんには嘘をついて、ちゃっかり二回分のバイト代をせしめるズルをしていた。ひょっとしたら近々叶うかもしれない彼女とのデートに備え、軍資金を貯めるつもりだった。
(一生しゃべれなくなったらどしよう!)
俺は一分でも一秒でも早く神様に謝りたいと、電車に乗っている間も心のなかでお社目指して懸命に走っていた。
俺は本気で怯えていた。
最初こそ夢かと疑ったマスク神の力は、現実のものだったのだ。隣の席の女子ともまともに話せない俺が、片想いの彼女とのデートを考えるようになるぐらい絶大な力だった。当然、それ相応に恐ろし罰が当たるに決まっていた。
俺がどれほど真剣にお社に手を合わせ、心のなかで自分の無礼なふるまいを詫びたか。怒りをお静めくださいとお願いしたか、想像がつくだろう。
だが、神様は許してくれなかった。
お社の前にひれ伏し、額を土に擦りつけていた俺は目の端で、一瞬、着物の裾らしき白いものが翻るのを見た。まるで神様が、俺を見捨ててくるりと背を向けたようだった。
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